輪島塗に一筋の光 わずかな在庫、都内で販売へ 能登地震ルポ

 
倒壊した倉庫から輪島塗の漆器が入った段ボールを運び出し、整理する岡山さん。「輪島塗を待っているお客さんのためにも早く事業を再開したい」と話す=1月30日午前11時、石川県輪島市鳳至町

 能登半島地震で生産・販売拠点が倒壊、焼失するなどした国指定重要無形文化財「輪島塗」。伝統を受け継いできた石川県輪島市の関係者は、被災した倉庫の中で無事だった輪島塗の在庫商品をかき集め、今月東京都で開かれる「いしかわ伝統工芸フェア」に参加する。9社が出展する予定で、産地復活に向けた一歩につなげたい考えだ。

 「畳一畳分の商品しか出せないけれど、一人でも多くの人に輪島塗を届けたい」。輪島市鳳至(ふげし)地区で輪島塗の製造、販売を手がける岡山至鳳堂(しほうどう)社長の岡山幸一さん(74)はフェアに参加する一人だ。

 岡山さんの事業所兼自宅には倒壊した両側の家屋が寄りかかり、在庫の商品を保管していた倉庫はつぶれた。岡山さんと妻は地震発生から数日間、車中泊で避難生活を送った。自宅に戻ると2人で倉庫から商品を運び出し、1月29日にようやく一段落したばかりだ。在庫の半分が無事だった。

 岡山さんの元には全国の取引先から「応援しています」と電話が相次ぎ、勇気をもらったという。現時点で今月のフェアに加え、6月にも出展が控えている。「こんな状況だが、動かないと」。地震が発生した元日から、時間が止まっているようだったという岡山さん。本格的な事業再開に向けて少しずつ歩み出した。

 輪島漆器商工業協同組合によると、今月のフェアには当初11社が参加予定だったが、地震の影響で2社減ったという。工房や事業所は市街地に集中しており、個人事業主を含む従事者が800人弱いるという。

 加盟する103社のうち観光地「輪島朝市」周辺の大規模火災で、少なくとも16社の事業所と店舗が焼失した。従事者の8割は工房兼自宅に被害を受け、このうち30社が全壊した。会員の7割は避難所での生活やホテルなどへの2次避難を余儀なくされている。

 再建までの道のりは険しいが、岡山さんは「お客さんのためにも早く事業を再開したい」と前を見据えた。(記事、写真とも報道部写真映像課・石井裕貴)

 募金スタート

 輪島漆器商工業協同組合は、輪島塗業界復興のための募金を始めた。寄せられた支援金を、漆工場などの修復や、従事者らの生活と仕事環境の再建、道具と資材の調達などに充てる。支援金の振り込み手順については組合のホームページで確認できる。