【環境考察/森の再生】 東大・日浦教授「人は森に守られている」

 
ひうら・つとむ 大阪府出身。北海道大大学院農学研究科博士課程修了。北海道大北方生物圏フィールド科学センター教授などを経て2020年4月から現職。

 地球温暖化防止などの観点から森林の価値が見直されている。森林環境を維持していくにはどうするべきか。森林生態学が専門で東京大大学院農学生命科学研究科の日浦勉教授(60)は「人は森林に守られている。だからこそ森林の機能や役割をもっと知る必要がある」と強調する。

 日浦氏は北海道の研究林で樹木の成長過程などを約40年にわたって観察してきた。そこではエゾマツなどの針葉樹が年々成長しにくくなり、広葉樹のミズナラなどが以前に増して育つようになったという。夏期の気温上昇や降水量の増加が関係したとみられ「気候変動で森林の姿が大きく変わってきており、森林の機能にも影響を及ぼすだろう」と予測する。

■樹木もストレス

 気温上昇など環境が変化すれば樹木もストレスを受ける。ストレスを受ければ「樹木は十分な機能を発揮できない。その上(ストレスによる影響が)目に見えてくるのは、かなりの時間がたってからだ」と日浦氏は言う。

 温暖化防止で森林の果たす役割は大きく、森林がなくなれば空気中の二酸化炭素(CO2)濃度も高くなる。森林のCO2吸収量について「正確な値が分かっていない」といい、日常生活などで排出される温室効果ガスを削減活動に投資することで相殺する「カーボンオフセット」の取り組みについて「仕組みとしてはいいが(CO2吸収量などの)データ部分については見直すことも必要だ」と指摘する。

 法改正や技術の進歩などで中高層ビルが木材で建てられるようになった。日浦氏は「炭素をため込んだ木材を活用することはすごく大事」とする一方で「若い木を植えればいいというものではない」と再造林での注意点を挙げた。樹木は気候や地質によって成長が異なり、果たす役割もさまざま。「その地域に合った木を植え、どんな林にしていくのかしっかりデザインする必要がある」と述べた。

■癒やしを与える

 森林はCO2を吸収するだけでなく、空気を浄化し癒やしを与える。生物多様性にも不可欠だ。「人が生活する上で欠かせない存在であり、お金に換算できない価値がある」とするが近年、人と森との距離が離れてきているのが気がかりという。「森に行けば楽しいことがたくさんある。そこで森のことを知り、『森ってすごい』と感じてほしい」と日浦氏。「人は森を守っているのではなく、森に守られている。だからこそ森のことをよく知り、機能や役割についてもっと考えるようにしなければならない」