コアジサシ帰ってきて 福島県内唯一の営巣地、11年間飛来なし

 
(写真上)コアジサシ、(写真下)営巣地だった砂浜を見つめながら、コアジサシへの思いを語る立花さん=いわき市平下大越

 福島県内唯一の営巣地であるいわき市の夏井川河口付近の砂浜で、野鳥のコアジサシが2013年以降、確認されていない状況が続いている。東日本大震災の津波と防潮堤の復旧工事などに伴い、砂浜の環境が変化したことが影響したとみられる。ただ、近年は工事が落ち着き、以前の生態系が戻りつつあることから、保護活動を続けてきた人たちからは再飛来を期待する声が上がる。

 太平洋と砂浜が広がり、真新しい防潮堤が続く夏井川の河口付近。日本野鳥の会いわき支部副支部長の立花博さん(73)は、そこにいるべきはずの野鳥がいないことに表情を暗くする。「営巣環境を自分たちの手で守ってきたのに、(コアジサシが)全く飛んで来ないのはつらい」

コアジサシ飛来数

 県によると、コアジサシは夏井川河口付近で確認されてきた。06年には最多飛来数170羽を記録し、12年までは飛来が確認できた。だが震災に伴う津波の影響で繁殖に必要な砂丘海岸が減少。03年に27.51ヘクタールだった夏井川河口付近にある新舞子海岸の砂浜は、22年に21.60ヘクタールに縮小した。防潮堤の復旧工事も必要となり、砂浜の状況は大きく変化してしまった。

 環境の変化は、野鳥などの生態を大きく左右する。立花さんは工事などに加え「河口が砂で埋まり、ふさがってしまった。付近のプランクトンが減り、餌のカタクチイワシなども減ってしまった」と指摘。天敵のカラスがひなを捕食したことも影響したとみている。

 戻ってきた生物も

 ただ、最近は明るい兆しも見えるようになってきた。河口付近で行われていた防潮堤工事が18年度までに終了。徐々に震災前に生息していた生物も確認できるようになってきた。立花さんは「チドリやシギなどの渡り鳥が戻ってきている。砂浜にもカニが作る穴が増えてきた」と期待を込めて観察を続ける。

 県は震災前から、河口付近の砂丘約12ヘクタールをコアジサシの繁殖期間である5~8月の4カ月間、立ち入り規制区域に指定。日本野鳥の会いわき支部と協力し、周知活動を続けてきた。いわき支部のメンバーも、天敵からひなを守るため竹製のシェルターを設置するなどの備えをしていた。

 コアジサシの再飛来を心から願う立花さん。「環境が良くなり海が再生すれば、何年後かにコアジサシが戻ってくるはず。またこの場所に卵を産みに来てほしい」。どれだけ時間がかかろうと、その姿を確認する日まで変わらずに思い続ける。(副島湧人)

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 コアジサシ カモメ科に属する小型のアジサシ。夏鳥として飛来し、本州以南の水辺の砂浜などを利用して集団で営巣後、オーストラリアやニュージーランド、フィリピンなどの越冬地に向かう。体長は約28センチ。海岸や河口、河川、埋め立て地など海に近い広い砂浜に産卵する。求愛時に2~3羽で、鳴きながらスピードをつけて飛び回るのが特徴。絶滅の恐れがある県内の野生動植物をまとめた「ふくしまレッドリスト」にも登録されている。