無人駅、にぎわい醸造 小高・元宿直室で酒造り「温かい場所に」

 
改札口に隣接して設置された醸造所(写真上)来店者と話す佐藤さん(左)。「無人駅にもう一度明かりをともし続け、温かい場所にしたい」と意気込む(写真下)

 JR小高駅が醸造所を兼ねる無人駅として生まれ変わった。駅のある南相馬市小高区などで新しいジャンルの酒「クラフトサケ」を製造しているhaccoba(ハッコウバ)が9日、駅内に醸造所をプレオープンした。JR東日本によると、無人駅に醸造所ができるのは国内初。ハッコウバ代表の佐藤太亮さん(31)は「駅はまちの顔。無人駅に明かりをともし続け、温かい場所にしたい」と意気込んだ。

 醸造所名は「ハッコウバ小高駅舎醸造所&パブリックマーケット」。かつて宿直室と駅事務室だった場所に整備された。日本酒の製造過程にホップやハーブなどの副原料を加えた「クラフトサケ」のほか、主な駅利用者である高校生にも親しんでもらえうよう、ノンアルコール飲料なども製造する。本格稼働は4月になる見通しだ。

 佐藤さんは「外から来る人にとっても、地元の人にとっても起点になることを期待している。高校生など地元の人が楽しめる場所にもなれば」と語り、憩いの場をつくり上げる考えだ。

 醸造所のほかに、物販と交流エリアを設けた。物販エリアでは自社製品のほかに県内のお土産を取りそろえ、文房具も並ぶ。交流エリアは飲食が可能で、購入した商品をその場で楽しんだり、くつろいだりできる。両エリアについてはイベントでの活用も検討していく。

 小高区は東京電力福島第1原発事故以降、居住人口が事故前の3割にとどまる一方、高齢化率は約49%と人口減少と高齢化が進む。小高駅も利用客の減少などから、2020年から無人化しており、醸造所は地域活性化の起爆剤としての役割も期待される。

 開業に協力したJR東水戸支社の池沢茂地域共創部長は「(ハッコウバの)地域をよみがえらせたいという熱い思いに感動した。地元に愛され、県外からも多くの人が訪れる場所になるよう、一緒に頑張っていきたい」と語った。

 小高駅前の双葉屋旅館で、女将(おかみ)を務める小林友子さん(72)は「またにぎわいが出てくればうれしい。若い人が頑張っているので、地元として応援していきたい」と笑顔を見せた。

 今後の営業時間などはハッコウバのインスタグラムで発信する。醸造所は新興企業のアイデアを実現する「JR東日本スタートアッププログラム」の一環として開業した。

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 JR東日本スタートアッププログラム ベンチャー企業や団体から駅や鉄道を活用した提案を募り、実現するJR東日本スタートアップ社の取り組み。2017年度に開始し、これまでに120件の提案を採択した。ハッコウバは22年秋のプログラムで「無人駅の活用による駅舎醸造所を中心とした地域活性化」の提案で採択を受けた。