処理水海洋放出の安全性評価 IAEA事務局長、長期的な注視必要

 

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は13日、東京電力福島第1原発を視察し、昨年8月に始まった処理水の海洋放出について「われわれの期待に沿った形で運用されている」と述べ、これまでの放出については安全が十分に確保されていると評価した。また視察に先立って出席した会合では「(放出は)非常に長いプロセスの最初の段階に過ぎない。影響が出ないよう多くの努力が必要」と指摘、長期的な視点での正確な運用や高い透明性が必要になると訴えた。

 グロッシ氏の来県は処理水放出開始前の昨年7月以来で、放出開始後は初めて。いわき市で開かれた政府の廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会に出席したグロッシ氏は、IAEAの現地事務所を中心とした情報収集を踏まえ、放出する処理水に含まれる放射性物質トリチウムの水準は非常に低いとの認識を示し「提案通りのプロセスが続けば濃度は低いままと考えられる」と述べた。一方、放出量はまだ全体の5%未満にとどまる点に触れ「水や海洋生物などにマイナスの影響がない形を続けていく必要がある」と関係者にくぎを刺した。

 処理水放出後に中国などが続ける日本産水産物の禁輸措置を巡っては、IAEAの報告書を基にした科学的な議論が展開されることを期待。「政治的な問題で近隣諸国からIAEAへの懸念や批判もある」とし、重要事項について関係者と継続的な意見交換を続けていく考えを示した。

 会議には県や原発近隣13市町村、県漁連などから約60人が出席した。IAEAと出席者の意見交換は非公開で行われたが、出席者によると、放出開始前後のIAEAの活動に対して「住民の不安払拭の要因になっている」と、評価する意見が多く聞かれたという。

 会議後、取材に応じた県漁連の野崎哲会長は、第1原発で発生した放射性物質を含む水の漏えい問題に関連してIAEAが「敷地外での環境影響はなく、処理水放出とは関係ない」などと発表したことに触れ、トラブル発生時の継続した対応を要望。「今後もIAEAの立場から対応してくれると約束してくれた」と明らかにした。

 グロッシ氏は同日、富岡町で地元の高校生らとの意見交換も行った。