大地震の火災...教訓に 久之浜と輪島、迅速消火へ水利確保重要

 
新たに配置された耐震性の貯水槽を紹介する鈴木さん

 「あちこちで爆発音がして現実離れしていた」。13年前の東日本大震災でいわき市久之浜町は県内で唯一、広範囲の大火災に見舞われた。今年1月の能登半島地震では石川県輪島市の「輪島朝市」周辺で大火災が発生しており、消防関係者や専門家は、がれきの散乱や水利が確保できなかったことで消防活動が難航するといった共通点を指摘。二つの火災を教訓としたルール作りや事前訓練の徹底、設備強化の必要性を訴える。

 消防車近づけず

 2011年3月11日。いわき市久之浜町での火災発生の通報を受け、消火活動に向かった市消防本部警防課長補佐の鈴木央(あきら)さん(45)の目の前には、信じ難い光景が広がっていた。延焼を防ごうと何度も炎の先に回って消火を試みたが、無線から聞こえてくる津波の情報で幾度も活動を中断せざるを得なかった。

 がれきの山だった現場には消防車が近づけず、水道管や防火水槽のひび割れ、消火栓が埋まるなどして、水利も確保できなかった。「現場にいた人たちはみんな悔しかったと思う」。鈴木さんは言葉を絞り出す。

 一方、輪島朝市の火災は最終的に津波の影響がなかったものの、大津波警報が出て沿岸からの避難が強く呼びかけられた。総務省消防庁の検証では、久之浜地区と同様に、がれきで防火水槽が使えなかったり、断水で消火栓が使えなかったりしたことなどから、広く延焼したと分析している。

 活動計画を作成

 久之浜地区の大火災を教訓として、いわき市消防本部は13年に「大規模災害時の消防活動計画」を作成。隊員が判断に迷わないよう消火活動の原則を定めた。災害対応中に火災があった場合は消火を最優先とし、津波の警戒広報に当たる隊員や消防団員の活動時間を明確化した。

 設備面では大地震発生時に自動で40トンの水が確保される耐震性の貯水槽を久之浜地区に新たに4基配置したほか、がれきの撤去などに使用できる小型重機を小名浜消防署に配備した。鈴木さんは「被害を最小限にするためにもルールを定めることが大切だ」と話す。

 地域に沿う対策

 地震・津波火災に詳しい東京大先端科学技術研究センターの広井悠教授は、二つの火災を比べ「水利の確保が難しく、消防活動が難しかったという共通点がある」との見解を示す。「河川から水を引く場合、距離に応じたホースの中継や延長などの訓練を消防団も含めて徹底しておくことが(効果的な)活動につながる」と対策を挙げた。

 広井教授は輪島朝市の火災について「古い木造の街並みなので、火災リスクが高いが、造り替えは現実的でない。避難対策や初期消火の訓練などでリスクを下げるなど地域の事情に応じて対策を選ぶことがポイントになる」と指摘。その上で、久之浜地区のような津波火災に備え「出火や延焼への対策は難しい。避難最優先だが、木造住宅が集中する場所やプロパンガスを使用している場所など、危険性や被災特性を知っておくことが重要だ」と強調した。(いわき支社・副島湧人)

久之浜地区中心部

炎が夜空を真っ赤に染め上げ、一晩燃え続けた久之浜地区中心部=2011年3月11日午後10時20分ごろ、いわき市久之浜町

          ◇

 いわき市久之浜町の大火災 東日本大震災時に県内で唯一、広範囲に火災が発生した。約50棟、約1.5ヘクタールを焼いた。がれきやプロパンガスなどによる延焼の可能性が挙げられている。

 輪島朝市周辺の大火災 住宅など約240棟を損傷、約4.9ヘクタールを焼失した。消防庁は屋内の電気配線が地震で傷つき、ショートするなど電気が起因した可能性を指摘している。