孤立防いだ「公営長屋」 22年本県沖地震から2年、相馬に整備

 
相馬市磯部の相馬井戸端長屋。高齢者12人が支え合いながら暮らしている

 本県沖を震源に最大震度6強を観測した2022年3月の地震から、16日で2年となった。相馬市では多くの住宅が被害を受け、高齢者も転居を余儀なくされた。そんな高齢者の受け入れ先の一つになったのは、東日本大震災をきっかけに市が整備した集合住宅だった。震災後、入居者が支え合って暮らしてきた集合住宅は、その後の災害で被災した高齢者の孤立化も防いできた。

 「ここで暮らすことができて、助かったよ」。相馬市磯部の高齢者向け集合住宅「相馬井戸端長屋」に22年7月から住む岩崎孝夫さん(67)は、そう語る。地震発生時は宮城県の病院に入院していた。5月末に退院し、1人暮らしをしていた同市の自宅に戻ると、地震で屋根瓦は落下し、室内は雨漏りがひどかった。「とても住めるような状況ではなかった」。1カ月程度は親類宅に身を寄せたが「いつまでも厄介になるわけにはいかない」と市に相談。井戸端長屋への入居を勧められた。

 岩崎さんが住む井戸端長屋には12世帯が暮らす。長い廊下に沿って入居者の個室が並び、それぞれの個室には和室と洋室の2間に台所、風呂、トイレが備わる。だが、洗濯機は共有で譲り合って使用する必要があったり、世間話ができる共有スペースがあったりと、住民の交流を進め、孤立化を防ぐ仕組みがある。岩崎さんは「長屋の住民とは毎日顔を合わせるよ。1人で暮らすより安心できる」と話す。

 市によると、井戸端長屋は阪神大震災で単身高齢者の孤独死が社会問題になったことを教訓に構想され、13年までに5棟が建設された。19年からは被災の有無を問わず、高齢者が入居できるようになった。22年の地震後には自宅に住めなくなった高齢者6人も暮らす。市の担当者は「住んでいる誰かの顔を見かけなくなったら、ほかの住民が部屋を訪ねるなど、長屋では互いに見守り合う暮らしがある」と説明する。

 市社会福祉協議会によると、市内の単身高齢者は増加傾向で、21年は903人だったが、地震後の22年の調査では859人に減少。山本留美子常務理事は「減少の理由は転居や施設への入所の増加だ。転居は高齢者の孤立化を招きやすく、防止するための長期的な取り組みが重要だ」と指摘した。(丹治隆宏)

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 2022年3月の本県沖地震 3月16日午後11時36分に本県沖の深さ57キロでマグニチュード(M)7.4の地震が発生し、相馬市、南相馬市、国見町で震度6強を観測した。県の被害状況即報(22年9月14日現在)によると、福島市や相馬市など8市町の165棟が全壊した。半壊は4024棟、一部損壊は3万621棟に上った。1人が死亡し、9人が重傷、92人が軽傷を負った。