広野に透析クリニック 双葉郡初、帰還促進へ 25年度中に開業

 

 いわき市の医療法人が2025年度中に、広野町に人工透析を受けられるクリニックの開業を計画していることが明らかになった。東京電力福島第1原発事故後、双葉郡内に人工透析を受けられる医療機関はなく、住民帰還に向けた課題の一つになっていた。専門医療機関の開業で、郡内の医療環境の整備や住民帰還の促進につながる可能性がある。

 福島県が21日、オンラインで開いた双葉郡等避難地域の医療等提供体制検討会で報告した。クリニック開業を計画しているのは、いわき市で「おなはま腎・泌尿器科クリニック」を運営する医療法人杏順会。人工透析のベッドを30床程度設ける予定で、同町のほか、いわき市北部と楢葉町、川内村からの患者受け入れを想定している。内科や泌尿器科も診療科目とする方針で、新年度中に建設工事に着手する予定という。県が地域医療再生基金から施設整備費の80%を補助する。

 県によると、原発事故前には郡内で二つの医療機関が透析患者を受け入れていたが、事故後は受け入れ医療機関がない状況が続いてきた。そのため、郡内に帰還した透析患者は周辺のいわき市や南相馬市、他県などで治療を受けざるを得ない状況が続いており、さらに人工透析が必要な避難者が古里に帰還できない理由の一つにもなっていた。

 県によると、郡内の透析患者数は把握できていないものの、いわき市の同クリニックには双葉郡からも患者が通っており、人工透析を受けられる医療機関には一定の需要があるという。

 郡内では、29年度以降の開院を目指す県立大野病院(大熊町)の後継医療機関でも人工透析を受けられるようになる見通し。ただ郡内の町村からは、住民帰還や移住・定住の推進などに向け、後継医療機関について2、3年程度の開院前倒しを求める声が出ている。県は「人工透析や小児科などの専門医療機関開設について地域から強い要望があった。クリニック開設を郡内の専門医療機関の充実につなげていきたい」(地域医療課)としている。