学校事故繰り返さないで 新年度国指針、教委に報告徹底求める

 

 事故の教訓をしっかり伝え、悲劇を繰り返さないでほしい―。須賀川市の中学校で起きた事故で娘を亡くした遺族が、改めて思いを強くしている。学校で起きた事故対応に関する指針を文部科学省が見直し、新年度からは国への報告を徹底するよう全国の教育委員会などに求めるからだ。文科省は情報を蓄積して再発防止に役立てる考えで、遺族は教育現場に理解が広がることを期待している。

 「学校で起きた事故は、なぜ報告も検証も処分もされないのか」。須賀川市の車谷(くるまたに)政恭さん(68)と妻晴美さん(61)は疑問を呈する。娘の侑子さん=事故当時中学1年、享年(27)=は2003年、須賀川一中で柔道部の練習中に頭を打って意識不明となり、18年に後遺症のため死去した。

 遺族は学校側に原因究明を求めたが、納得のいく回答はなく「原因不明」の文言がむなしく響いた。車谷さんは「どこに事故の原因があったのかをしっかり調べ、それを共有して事故を繰り返さないようにしてほしい」と願う。

 学校での重大事故を繰り返さないため、文科省は指針で事故状況を国に報告するよう求めている。事例を共有するためホームページで公表しているが、文科省が昨夏に行った都道府県・政令指定都市への調査では国に対し「報告していないものがある」教委が6%、「全て報告しなかった」教委が29・5%あった。

 国への報告が不十分な点について、学校事故を調査する名古屋大の内田良教授は「『子どものことは学校内で解決すべきだ』という文化や教員の長時間労働などにより、事態が過小評価されたり、調査が後回しになったりするのが一因」と指摘する。事故の検証は教員の専門性の範囲を超えており、外部の専門家の意見が必要とした上で「安全な環境なくして教育は成り立たない。まずは国や現場の意識を変える必要がある」と話している。

 須賀川一中柔道部事故 2003年10月に発生。事故を巡る民事訴訟の事実認定などによると、車谷侑子さんは当時部長の男子生徒に一方的に投げられて頭を強く打ち、硬膜下血腫のため意識不明となった。侑子さんと両親は06年8月、学校側が安全配慮義務を怠ったなどとして損害賠償を求め、市などを提訴。地裁郡山支部は09年3月、市などの過失を認め、約1億6千万円の支払いを命じた。

 学校事故対応に関する指針 学校での事故の未然防止や事故時の適切な対応を取るため、2016年3月にまとめられた。学校や教委などに対して事故事例の共有や死亡事故の検証・分析、国への報告などを求めている。有識者らによる見直しが行われ、調査や報告などの徹底を求める改訂案が2月の会議で了承された。