【エフレイ設立1年・下】本施設稼働「3年後に」 発信を強化

 
エフレイの本施設予定地には草地が広がる。右奥は仮事務所が入る交流施設

 伸び放題の草原に小鳥の鳴き声だけが聞こえていた。浪江町のJR浪江駅西側の福島国際研究教育機構(エフレイ)の建設予定地沿いは、まだ人も車もほとんど通らない。

 1月に復興庁が策定した施設基本計画によると、建物の延べ床面積は8万3900平方メートル。野球グラウンド約6面分の広さで、6年後は研究者500人と事務職員200人が働く一大拠点になる見通しだ。

 国は2024年度に本施設の具体的設計に着手し、30年度までに順次整備する予定。理事長の山崎光悦は施設の利用開始時期について「今から3年後には1、2棟の建物が完成し、研究者が活動を始める」と想定を明かした。

 計画は、施設を4区画に分け▽多様な研究活動に対応▽環境と景観に配慮―など六つの視点を盛り込んだ。特に山崎が重視するのは、異分野融合と地域とのつながりだ。

 22年まで8年間務めた金沢大学長時代、地方の中規模大で唯一「世界トップレベル研究拠点プログラム」に採択。国から多額の支援を受けられるもので、優位な研究領域の進展と異分野融合を両輪で進めたことが奏功したいう。エフレイでも自然と相乗効果が生まれる環境づくりを目指す。

 「地域に開かれた場所」(山崎)にするため住民との交流空間も整える方針だが、エフレイの存在は設立1年を過ぎた今も地元に浸透したとは言い難い。

 浪江町が3月策定の「国際研究学園都市構想」を巡り実施した意見公募では、エフレイに対し「復興のシンボルになることを期待」など前向きな声があった一方、「誰が何をするのかさっぱり分からない」などの意見も複数寄せられた。

 地元にどう役立つか

 広報専門職がいないエフレイの発表には難解な用語が並び、研究活動に関する報道は限定的だ。3月8日の政府復興推進委員会では、委員から「研究内容の分かりやすい発信が必要」などと指摘が相次いだ。

 委員で岩手大人文社会科学部教授の奥野雅子は、取材に「情報発信の不足は住民との間に温度差を生じさせかねない。研究がいかに地元に役立つのか、質・量とも一層の発信を意識してほしい」と注文した。

 こうした声を受け、エフレイは25年大阪・関西万博で研究成果を国内外に紹介するなど、発信力強化を打ち出す活動計画を公表。科学者と市民の架け橋となる専門職員も雇用する方向で準備を進めている。

 「一つでも日本中を驚かせる研究成果を出せば、認知度不足は一瞬で解消できる」と山崎は言う。「来年にも最初の成果を出したい。そうでないと、なかなか『おらがエフレイ』とは呼んでもらえない」。視界に描くのは、世界へ羽ばたき、地元の誇りになる未来だ。(文中敬称略。この連載は斉藤隼人が担当しました)

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 エフレイ本施設 政府は2022年9月の復興推進会議で浪江町川添地区への立地を決定。今年1月に施設基本計画を策定した。敷地は▽研究▽連携・交流―など機能別に4区画に分け、現在は用地の取得を進める。30年度までに順次利用を始める方向で「可能な限り前倒しに努める」とした。