和泉元彌さん、覚悟の相馬野馬追 伝統の騎馬武者に尊敬の念

 
野馬追とゆかりの深い平将門を祭る神田神社に立つ和泉元彌さん。「(野馬追に)尊敬の念を持って臨ませていただきたい」と話した

 25日に開幕する国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」に騎馬武者として出場する狂言師の和泉元彌さん(49)は、福島民友新聞社の取材に応じ、「伝統を守る人々の心に出会う貴重な経験になると思う」と期待を語った。(丹治隆宏)

 ―野馬追の開催が迫ってきました。
 「全国に勇壮と言われる祭りは多いが、これだけリアルなものは、ほかにはないのではないかと思います。何度か相馬を訪れ、お話を聞いて、野馬追は生活に密着した、その土地の皆さんが守り伝えてきた祭りだと分かりました。この輪の中に入るには覚悟がいるなと思いました。皆さんが大切にしてきたお祭りにお邪魔させていただくという気持ち、尊敬の念を持って臨ませていただきたい」

 大河で乗馬

 ―乗馬体験は。
 「大河ドラマ『北条時宗』(2001年)で主人公時宗を演じた際に、スタントなしで、弓と馬のシーンを撮りたいという監督からの強い要望があり、時宗の父・時頼役の渡辺謙さんと岩手県の乗馬クラブで訓練をしました。しばらく乗馬から遠ざかっていたので、野馬追に向けて稽古もしました。馬は簡単には言うことを聞いてくれません。言葉は通じないが、意思を持っている。『馬は背中で感じ取るので、姿勢を良くして乗らないと馬鹿にされるよ』と二十数年前に教えられたことを思い出しました。最後のレッスンの時、むちを打たなくても走ってくれた。むちを持つ手を動かしただけで、私の意思が伝わった。人馬一体になる喜びを感じることができました」

 ―甲冑(かっちゅう)は。
 「今回は宇多郷騎馬会の方から拝借することになりました。1年に1度、その家の方がお召しになってきた甲冑を、自分が着せていただくのは、ありがたく、光栄なことです。事前にかぶとをかぶらせてもらいましたが、ひもが使い込まれ、柔らかくなっているのが印象的でした。美術館に飾られ、人に触れられず残ってきたよろいではない。その家の人と一緒に生きてきたよろいなのだと思いました」

 平将門と縁

 ―旧藩主相馬家の先祖とされ、相馬中村神社(相馬市)の国王社に祭られる平将門と縁があります。
 「新型コロナウイルスの感染拡大で、全国の文化会館、ホールが、そして能楽堂が封鎖されました。世の中が少しずつ動き出しても、文化芸術はしばらくは止まったままでした。そんな中で、将門公を祭る神田神社(東京)が、狂言公演の場として、境内の文化交流館内にあり十分な換気ができる『令和の間』を貸してくださった。今も令和の間での公演は続いています。野馬追は将門公が始めたということも知りました。そこに自分が出場させていただく。ご縁というのは本当にあるんだなと実感しています」

 ―伝統を変えない意味をどう考えますか。
 「今の時代は、こうした方がおもしろいというアイデアがたくさん生まれるかもしれません。けれど、変えてしまったら、昔の日本人、先人の心には出会えなくなる。だから、和泉流は狂言のせりふ、言葉の抑揚、一瞬の間、そうした型を厳しく守ってきました。野馬追は新型コロナ禍でも、工夫をして続けてきたと聞きました。本当に強い思いがなければ、できないことだと感じています。千年以上続くお祭りの中に入ることで、伝統をつないできた大きな背中を見せていただけるのではないか、今後の自分にとって大きな糧を頂けるのではないか、と思っています」

 いずみ・もとや 1974年生まれ、東京都出身。狂言の和泉流20世宗家。19世宗家元秀さんの長男として、3歳で初舞台を踏み、16歳という異例の若さで秘曲「釣狐」を演じた。2001年にはNHK大河ドラマ「北条時宗」で主演を務めた。テレビ、映画などで幅広く活躍中。姉の和泉淳子さん、三宅藤九郎さんは、初の女性狂言師。