喜多方の空き蔵に再び命 修復・改築し店舗や宿泊施設へ活用

 
「喜多方のシンボルである蔵を後世につないでいきたい」と意気込む(右から)矢部さん、樟山さん、佐藤さん

 「蔵のまち」として知られる喜多方市で眠っている蔵を利活用しようと、市内の民間企業の社長らがまちづくり会社「蔵の街喜多方株式会社」を設立した。少子高齢化や後継者不足などを背景に増加する空き蔵や空き店舗を修復・改築し、"蔵のまち喜多方"の再生を力強く推し進める。

 発起人は、倉庫業の大善社長の矢部善兵衛さん(74)、大和川酒造店会長の佐藤弥右衛門さん(73)、喜多方観光物産協会長の樟山敬一さん(67)の3人。矢部さんが新会社の社長、佐藤さんと樟山さんが取締役に就任した。

 矢部さんによると、同市には約4千棟もの蔵がある。同市は古くからみそやしょうゆ、酒などの生産が盛んな地域で、湿度や温度を一定に保てる蔵が醸造に適していたことなどから、明治から昭和にかけて市内全域に建てられたという。

 3人はいずれも蔵文化の継承などを目的に1995年に設立された「喜多方蔵の会」に所属。市内外の蔵を愛する有志約50人が在籍し、講演会などを通して蔵保存の必要性を訴えてきた。

 新会社設立のきっかけは、約2年半前に閉店した市内最古のれんが店蔵で、近代化産業遺産に認定されている旧金田洋品店の関係者から「店舗を活用してくれないか」と蔵の会に相談があったことだった。「シャッターが目立つ町並みに昔のにぎわいを取り戻そうじゃないか」。スピード感を持ってハード面の整備を進めるまちづくり会社の必要性を感じ、矢部さんらが立ち上がった。

 新会社では、蔵の所有者らからの相談に応じ、蔵の修復や改築、賃貸仲介などを担う。出資金や金融機関からの融資を活用し、店舗や宿泊施設、見学施設として蔵を再生させる。市内の事業者などから共感を集め、出資金は2千万円を超えた。

 現在は、依頼があった旧金田洋品店の蔵を改修し、ギャラリーとしてよみがえらせる計画を進めている。同店が生家で、喜多方の蔵を全国に広めた写真家の故金田実さんが撮りためた蔵の写真を展示する予定だ。

 「市民の力も借りて、最終的には若者が喜多方に移り住みたいと思えるような街を目指したい」と矢部さん。佐藤さんは「喜多方には『男40にして蔵の一つも建てられないようでは男ではない』という考え方があった。喜多方の商人たちのシンボルである蔵の再生に向けて力を尽くしたい」と意気込む。(阿部二千翔)

 市「保存努める」

 喜多方市は2019年に蔵の新築や改修にかかる経費の補助制度を設立するなど、蔵の保存に力を入れている。担当者は「空き蔵の件数は把握していないが、農家や店舗の担い手不足などにより、増加傾向にあると認識している。昔ながらの蔵を後世に残していくため、市も蔵の保存に努めたい」と話している。