ぬくもりを能登に...座布団500枚寄贈 一針に真心、いわきの寝具店

 
被災地への応援の思いを込めて作業する江尻さん=いわき市

 500枚超の手作り座布団が能登半島地震の被災地に届けられる。いわき市にある江尻寝具店代表の江尻健二さん(72)と従業員2人が約5カ月かけて仕立てた。江尻さんは東日本大震災で一時身を寄せた避難所の床が冷たかった経験から支援を思い付いた。「座布団のぬくもりで気持ちを落ち着かせてほしい」との願いが込められた座布団は5、6の両日、石川県珠洲、七尾、志賀、能登の4市町に贈られる。

 避難所経験から着想

 創業50年以上の工場に3日、江尻さんと従業員の高木克子さん(81)、根本一郎さん(70)の姿があった。根本さんが精綿を手がけ、江尻さんと高木さんが座布団を縫ったり、綿を詰めたりするなどして一枚の座布団が出来上がる。

 能登半島地震の発災後、衛生用品や水、食料などの支援物資が続々と被災地に届けられる様子を知り「自分にもできることはないか」。江尻さんが熟慮して出した支援が、50年以上の経験が生かせる座布団の寄贈だった。東日本大震災時に津波の影響などで工場が被災。避難所で生活した経験が、寒さ厳しい北陸で避難生活を送る被災者の姿と重なったことも背中を押した。

 作業着手は1月15日。こつこつと作業を続ける中、立ちはだかったのが輸送の問題だったという。当初は自分で届けるつもりだったが家庭の事情などで断念せざるを得なかった。

 そこで知人を通じ知り合ったいわき市シルバーリハビリ体操指導士会長の藤原善子さん(71)を頼り、4市町のシルバーリハビリ体操指導士会に届けることになった。座布団は仮設住宅や各地のシルバーリハビリ体操で活用される見込みだ。

 藤原さんが3月中旬に工場を訪ねると、すでに300枚の座布団が出来上がっており、藤原さんも「何とか(座布団を)届けなくてはいけない」と奮起したという。

 いわき市シルバーリハビリ体操指導士会の会員から寄付金を集めたり、市内の関係団体などから協賛を募ったりして、目標の35万円を超える77万円の善意も集まり、輸送用トラックなどの手配ができた。

 当初は485枚の予定だったが、4日の積み込みを前に江尻さんらは3日、さらに23枚を積み上げた。「避難が続くと悲観的になるかもしれないけど、応援してくれる人がいることを忘れないでほしいんだ」と江尻さん。房糸を結ぶ丁寧な手つきが、被災地への思いを物語っていた。(折笠善昭)

240604news7041.jpg※写真=江尻さん(中央)とともに500枚を超える座布団を仕立てた根本さん(左)と高木さん