【環境考察/気象の変化】台風被害甚大に 水温の高さ、勢力比例

 
防波堤に激しく打ち寄せる大波。地球温暖化は台風にも影響する=2019年10月、いわき市・四倉港

 近年、台風や大雨による深刻な被害が各地で相次いでいる。2019年10月の東日本台風(台風19号)では、関連死を含め県内で40人が犠牲になった。研究者は気候変動の影響を指摘し「今後も強い雨や台風が発生する可能性は高い」と警鐘を鳴らす。

■総雨量1割増の試算

 「地球温暖化の影響で、関東甲信地方で降った(東日本台風に伴う)総雨量が1割増加した」。そんなシミュレーション(模擬実験)結果を、気象庁気象研究所の研究チームがスーパーコンピューターを使ってまとめた。1980年以降の気温と海面水温の上昇により台風が発達した。研究チームは「台風が襲来すると近年の気温上昇の影響が顕著に表れ、降水量を増加させることを示唆している」と分析する。
 温暖化は、なぜ台風に影響をもたらすのか。「台風の強さや発達には海水温が大きく関係しているからだ」。台風のメカニズムや温暖化の影響などについて研究する海洋研究開発機構特任研究員の山田洋平(43)はこう指摘する。

 台風のエネルギー源となる大気中の水蒸気量は海面水温が高いほど多くなり、台風の勢力が増す。山田は温暖化によって海面水温が上がれば「21世紀末には国内で台風に伴う降水量が11・8%増加する」と予測。強風域についても「拡大する」とみている。

■離れていても要注意

 県内では2022年8月、大雨で会津を中心に大きな被害が出た。これについても、台風に伴う影響を指摘する声がある。大気と豪雨の関係を研究している同機構研究員の趙(ちょう)寧(ねい)(35)によると、この時期に発生した台風6号は九州から北上して韓国付近で消滅したが、「強い風の影響で水蒸気が『大気の川』となって運ばれ、東北地方に雨を降らせた」という。「温暖化によって風が強くなれば、台風から離れた場所でも強い雨が降る可能性がある」と趙は話す。

 東北地方で今後気温が2~4度上昇した場合、1時間に30ミリ以上の雨が降る回数は、20世紀末(1980~99年)と比べて21世紀末(2076~95年)では1・6~2・5倍に増加すると見込まれている。一度に降る雨の量が増えれば被害が甚大化し、生活に大きな支障が出る恐れがある。積雪や水環境などを研究する東北大工学研究科土木工学専攻教授の風間聡(57)は「今後、気温が上昇していくのは間違いない。そのための対策を早いうちに、できることからやっていくことが重要だ」と強調する。(文中敬称略)

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 台風の仕組み 強い日差しで海が温められて水蒸気が発生し、空気と混ざって上昇する。上昇に伴い空気は冷却され水蒸気は水滴になり、雲や積乱雲ができる。その際放出される熱が周りの空気を暖めることで、気圧の低下と上昇気流の強化が生じ、渦が強まって台風となる。