【環境考察/気象の変化】流域治水へ転換、地域全体で浸水被害防ぐ

 
東日本台風で浸水した住宅地。新たな治水対策が進められている =2019年10月、伊達市梁川町

 「気候変動による水災害リスクの増加で、これまでの治水対策だけでは流域を洪水から守り切ることはできない」。福島河川国道事務所などが5月に郡山市で開いた治水対策の説明会で、そんな考えが示された。

 国などが試算した気候変動に伴う将来の降雨量によると、2040年までに平均気温が2度上昇した場合、降雨量は約1・1倍になり、河川の流量は約1・2倍に、洪水の発生頻度は約2倍になると想定している。

 従来の対策では限界

 想定に基づくと、19年10月の東日本台風(台風19号)で甚大な被害が出た阿武隈川流域では浸水世帯が約4万4100世帯に上り、気候変動を考慮しない従来の想定(2万世帯)の2倍以上になるという。「降雨を川の中で治められるように対策をしてきたが、それだけでは難しい状況にある」。同事務所流域治水課長の秋田桜彩(さあや)(31)は危機感を示した。

 被害を減らすため、国はダムや堤防などが中心だった対策から、流域の自治体や企業、住民らが一体となって取り組む「流域治水」への転換を進めている。県内では20年に国や県などが阿武隈川上流流域治水協議会を設立。阿武隈川を掘削し、水が流れる面積を広くして水位を下げるほか、あふれた川の水を一時的にためるため、阿武隈川上流の鏡石、矢吹、玉川の3町村に「遊水地群」を整備することなどを盛り込んだプロジェクトを立ち上げた。

 遊水地群の総面積は約350ヘクタールで、貯留量は約1500万~2千万立方メートルと、東京ドーム12~16杯分に相当する。田んぼダムの取り組み拡大なども計画しており「あらゆる関係者が協力して浸水被害を防ぎたい」と秋田は話す。

 「これからは総力戦」

 国は今年3月に釈迦堂川流域河川を「特定都市河川」に指定した。県も逢瀬川と谷田川の両流域を7月に指定する方針で、河川改修などで国の補助を受けやすくなるなどの効果が期待される。具体的な対策は協議会を設けて議論される見通しで、5月31日に須賀川市で釈迦堂川流域水害対策協議会の発足会が開かれた。

 同協議会の座長を務め、洪水対策や水資源管理などに詳しい日大工学部教授の朝岡良浩(47)は、治水対策が「気候変動の影響を考慮した新たなフェーズ(局面)にある」と指摘する。従来の河川整備に加え、雨水を貯留する場所の確保や洪水時の備え、被害が出た際の迅速な復旧の重要性を強調した上で「これからの治水対策は総力戦。行政や企業、住民が一緒になって取り組まないといけない」と力を込めた。(文中敬称略)

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 流域治水 ダムや堤防の整備が中心だった従来の治水を見直し、流域の自治体や企業、住民らが一体となって対応する。具体的には、大雨であふれた水を自然池や水田などに一時的にため、下流の被害を食い止めることなどを想定。被害を受けやすい場所からの住居の移転なども検討する。