【環境考察/気象の変化】企業の水害対策強化 取引先との信頼守る

 
東日本台風後に、いとうフーズが設置した防水壁。敷地を囲うようにしている=郡山市

 「過去の水害を踏まえ、2メートルくらいかさ上げをして建てたので、浸水することはないと安心しきっていた」

 2019年10月の東日本台風(台風19号)で本社・工場が浸水被害に遭った、いとうフーズ(郡山市)社長の伊藤武(49)は語った。食肉を加工する機械が使えなくなり、商品製造がストップ。機械の交換や修理を余儀なくされるなど、損害は2億円近くに上った。それ以上に「取引先に迷惑をかけてしまい、信頼を失ってしまったことが大きかった」という。

 防水壁やマニュアル

 再び被害に遭わないよう敷地を囲う防水壁を設置し、河川状況に関する情報収集や従業員の安全確保などを盛り込んだ「水害対策マニュアル」を策定した。「改めて水害は怖いものだと認識した。備えをしなくてはならない」と伊藤は話す。

 同様に東日本台風で浸水被害に遭った東亜通商(郡山市)は、電源設備を高い場所に移し事業継続計画(BCP)を策定。大雨予報の際は車両が水没しないよう移動させるため社長の高橋正子(64)は「雨が降ると仕事にならない」と冗談っぽく笑った。ただ「それくらいしないと『大丈夫だろう』となってしまう。準備をしっかりしたい」と危機感を抱く。

 BCP策定20.9%

 サプライチェーン(製品の供給網)への影響などから必要性が叫ばれるBCPは、県内でも策定が進みつつある。帝国データバンク郡山支店が23年に行った調査によると、BCPを策定している県内の企業の割合は20.9%で、前年より3.6ポイント上昇した。

 事業継続が困難になると想定しているリスクは「(地震や風水害などの)自然災害」が75%で最も多く、2番目の「設備の故障」と30ポイント以上の開きがあった。郡山支店は「(東日本台風などの)自然災害が頻発しているため、策定している企業が過去最高になった」と分析する。

 一方で「策定意向がある」割合は5割を下回っていることなどを踏まえ「BCPの準備を怠ることで経済活動に与えるマイナスの影響は大きく、企業、行政が連携して対策を講じていくことが求められる」とする。

 防災政策などに詳しい東北大災害科学国際研究所教授の丸谷浩明(64)はBCPについて「サプライチェーンへの影響や取引先との関係を守る意味でも重要だ。地震だけでなく、ほかの災害にも対応できるBCPに発展させることが大事であり、他社との協力など幅広い視点で考えるため経営層に関心を持ってもらいたい」と指摘。水害対応のBCPについては「水害は天気予報などで、ある程度予想できるので直前の回避行動を含んだものにするのがポイント」と話した。(文中敬称略)

 事業継続計画(BCP) 「Business Continuity Plan」の略称。大規模災害やテロ攻撃などの緊急事態に備え、企業が事業の継続や早期復旧を可能にするための方法や手段を取りまとめておく計画。従業員の安否確認や耐震補強、資金繰りの確保など経営全般に及ぶ。今年4月から介護事業者での策定が義務化された。