【参院選・首都圏演説ルポ】待機児童で議論 多様性社会訴え

 

 終盤戦に入った参院選で各党党首は街頭演説を重ね、支持拡大へ追い込みをかけている。しかし、首都圏で党首らの街頭演説を聞いても震災と原発事故からの復興や原子力政策を積極的に唱える声は響いてこない。年金と老後資金の問題や消費増税の是非、景気対策など生活に密着した課題が優先され、被災地の復興はかすんでいる現状が浮かんだ。

 公職選挙法の政党要件を満たす7党の党首らが4日の公示日を除き、首都圏で行った街頭演説を1回ずつ取材した。社民党は党首に代わり、選挙期間中の取材対応を担う幹事長とした。

 東京では希望しても認可保育所などに入れない「待機児童」を巡り、与野党が議論を戦わせた。支持者の声援と批判的な立場の人たちの怒号が飛び交う異様な雰囲気の中、安倍晋三首相(自民党総裁)は保育士の処遇改善を進めた実績を挙げ「民主党政権の3年間、処遇が全く改善されないどころかマイナスだった」と野党を攻撃。「大切なのはしっかりと財源を確保し、約束したことを実行することだ」と拳を振り上げた。

 公明党の山口那津男代表は消費増税に伴い、10月に始まる幼児教育・保育の無償化をアピールし「待機児童の解消と幼児教育・保育の無償化の両方を併せて実行していく」と明言した。

 「安倍政権は順番が間違っている」。社民党の吉川元・幹事長はこう切り込み「幼児教育・保育の無償化に充てるお金を保育士の処遇改善に使えば保育の質を向上できる」と主張した。

 一方、令和初の国政選挙を意識し、多様性のある社会像を示すことで独自色を打ち出そうという動きも目立つ。立憲民主党の枝野幸男代表は「多種多様な暮らし方に政治が対応しなければならない」と提起し「少数の人の生き方を大事にしないと、世界の中で日本の発展はない」と指摘した。

 共産党の志位和夫委員長は選択的夫婦別姓の導入やハラスメントの防止を挙げ「ジェンダー平等は女性だけの問題でない。誰もが自分らしく生きていける社会をつくりたい」と述べた。

 「人生100年時代」に言及した国民民主党の玉木雄一郎代表は「誰の身にも病気や介護が必要になる事態は起こり得る。国民生活の安心を取り戻すため、社会の在り方を変えていく必要がある」と力を込めた。

 震災復興に唯一触れたのは日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)。復興財源を捻出するため増税した経緯から「国会議員が報酬カットをやめたのは筋が違う。身を切る改革が先決であり、消費増税は凍結すべきだ」と持論を展開した。