【参院選・記者座談会】盛り上がり欠けた福島県 議論は一方通行

第25回参院選福島選挙区は、自民党現職の森雅子氏が野党統一候補として立候補した無所属新人の水野さち子氏に大差をつけて勝利した。ただ投票率は52.41%にとどまり、県民の関心は薄かった。取材を担当した記者が選挙戦を振り返った。(取材班)
A 10万票もの差がつくとは予想できなかった。森氏の勝因を挙げるなら。
C 自民党と公明党の選挙協力に地力があったということだろう。組織力を発揮して手堅く票をまとめたことが勝因の一つだ。前回、野党統一候補に敗れたことによる危機感が組織引き締めにつながった。
B 水野氏の陣営は選挙直前に発覚した老後資金問題が争点となると考えていた。独自の世論調査の結果を踏まえ、選挙選の序盤は手応えをつかんでいた。
E 陣営は電話で選挙区の支持を呼び掛ける時に苦労したようだ。水野氏が国民民主党を離党して無所属で出馬したため、有権者から比例代表の投票先を問われた際、陣営が答えられずに、有権者の関心を失ったと聞いた。
D 野党が安倍政権に対する不満の受け皿になり切れていない、ふがいなさも感じられた。旧民進党分裂の余波は続き、立憲民主党や国民民主党などの野党間の連携体制や有権者の信用を集められないなど大きな影を落としている。
B れいわ新選組に一定の批判票が流れたと分析できる。旧民進党を軸にした既存の野党には期待が持てないが、与党を無条件に信任できない。こうした有権者の不満が支持を押し上げた。次期衆院選へ野党には有権者が納得できる明確な政権構想が求められる。
E 福島選挙区の投票行動を見ると、興味深い点があった。衆院小選挙区別の得票数で4区以外は全て森氏が水野氏の得票数を上回った。中でも3区は野党の衆院議員玄葉光一郎氏の牙城とされるが、全市町村で森氏の得票数が上回り自民に追い風となりそうだ。
A 福島選挙区の投票率は過去2番目に低く、選挙期間中、有権者から「選挙の実感がない」との声も聞かれた。盛り上がりに欠けたのはなぜか。
E 参院選は政権の中間評価の意味合いが強く、県内の有権者があまり身近に感じられなかったと考えられるが、具体的な政策論争が行われなかった点も要因ではないか。
C 森氏は政権与党として復興の前進を、水野氏は野党統一候補として年金制度や消費税増税の是非を掲げたため、議論が一方通行になった感がある。
B 選挙になれば青年会議所(JC)による公開討論会が企画されるが、今回は開かれなかった。政策が固まり切っていない陣営が候補者に公開された場で話をさせることを「リスク」と捉えて回避したことが理由のようだが、有権者に直接訴える機会を自ら手放したのはいかがなものか。
E 公示間際になって政治団体「NHKから国民を守る党」の田山雅仁氏が立候補した。遊説を全く行わず会員制交流サイト(SNS)などのネット選挙を展開。「選挙七つ道具」も受け取らなかった。一つの公約だけを訴え続けた政治団体が比例代表で1議席を獲得したことに驚きを感じた。
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