【参院選・激戦の裏側】自民、野党共闘に雪辱 危機感で引き締め

 
自民党県連の役員会で選挙戦を総括し、復興加速化を誓う太田幹事長(右)。復興・創生期間後の在り方を巡る議論は正念場を迎えている=22日午前、福島市

 自民党現職・森雅子の当選から一夜開けた22日午前、福島市の自民党県連会館には、支持者へのあいさつ回りを終えた県連役員らが続々と集まっていた。激戦の疲れが残る中、野党統一候補に約10万票差で3年前の雪辱を果たした余韻で表情が和む。役員の一人は「これほどの大差がつくとは想像できなかった」と思わず本音を漏らした。

 2016年参院選で自民の現職閣僚が敗れた経験から、野党統一候補との対決には危機感があった。森には現職2期と元少子化担当相という抜群の知名度がありながら、陣営は「厳しい選挙戦だ」と連呼。県連幹部は「絶対に負けられないというプレッシャーが相当あった」と振り返る。

 陣営は、約140に上る支援・友好団体や推薦を受ける公明党などを軸とした組織戦に加え、国会議員や県議、市町村議によるあいさつ回りを徹底。総合選対本部長に就いた県連の重鎮・佐藤憲保が号令を掛けたことで県議の一人は「組織が引き締まり、自分の選挙以上に運動する議員が多かった」と明かす。佐藤は「組織戦だけで10万票差は出ない。相手以上に草の根運動に力を入れたということだ」と胸を張る。

 公示後、新聞各社の世論調査で「森先行」が伝わると、党本部からファクスで二階俊博幹事長名の檄文(げきぶん)が県連に届き、組織固めを徹底した。女性同士の対決の構図に県連幹部は「逆に候補者の差別化がなくなり、現職の実績を踏まえ、教育や子育て環境の改善を訴える森への支持が広がった」と分析する。

 県連は今回の勝利を追い風に、11月の県議選や次期衆院選に弾みをつけたい考えだ。

 一方、東北6県で自民が勝利したのは福島、青森だけで、政権与党に対する厳しい視線も注がれた。県連幹部は「都市部との所得格差などの不満が反政権票につながったのではないか」と推察。本県での大勝の裏には「復興加速に向けた政権与党への期待感がある」と受け止める。

 自民党東日本大震災復興加速化本部は、8月にも復興の8次提言をまとめる方針で、復興庁の後継組織や財源確保の在り方などが焦点となる。復興・創生期間の終了まで1年余。22日の県連役員会で幹事長の太田光秋は選挙戦を総括後「党本部や県などと連携し、復興と地方創生を前に進める責任がある」と力を込めた。44万票の期待に応え、本県復興の将来像をどう示すかが問われる。

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 自民党の現職候補が議席を死守した今回の参院選。3年前の参院選と同様に「自公対野党共闘」の戦いの構図の裏側で、各陣営はどう戦略を描いたか。激戦を振り返り、今後の県政を探る。(文中敬称略)