【参院選ふくしま・焦点】コロナ/温泉街の存続、頼みは個人客

 
「団体客向けでは生き残りが困難」とする池田さん。ターゲット層の変更など転換点を迎えている=福島市・土湯温泉

 収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症の影響が、あらゆる業種で長引いている。観光業も例外ではなく、福島市の土湯温泉では年間の利用者数がコロナ禍前の半分程度に落ち込むなど状況は深刻だ。温泉街の存続へ一つの"転換点"を迎えている現場からは切れ目のない支援を期待する声が聞かれる。

 書き入れ時の春の大型連休。コロナ禍3年目の今年も、福島市を代表する温泉街に、大人数で旅行を楽しむ人の姿はなかった。「(東日本大震災が起きた)11年前よりもひどいかも」。福島市のNPO法人土湯温泉観光協会事務局長の池田和也さん(64)はそう話した。協会によると、コロナ禍前に年間20万人台前半だった宿泊や日帰り温泉の利用客数は、20、21両年度とも10万人台前半に落ち込み、感染症の長期化は大きな痛手になっている。

 現在、流行の主流になっているオミクロン株は、重症化リスクが従来株と比べて低いが感染力は強い。「密」の回避が求められる中、池田さんは「従来の団体客向けのスタイルではもう生き残れない」とみる。

 池田さんの言葉通り、土湯温泉ではある変化が起きた。旅館「山水荘」が四半世紀ぶりの大規模改修を行った。感染のリスクが高く、集客を見込めない団体客ではなく、需要が見込まれる個人向けを重視する路線に切り替えた。渡辺和裕社長(72)も「時代に合わせた改修」と意義を語る。

 街の環境整備が鍵 個人客への転換は、一つの旅館(点)で完結していたこれまでの旅行とは異なり、食事や各種体験などを地域(面)で満喫してもらうことを意味するという。そのためにも、街全体での環境整備が鍵を握る。池田さんは「時代に見合った街づくりが必要で、環境が整っている所こそ生き残っていける」と力を込める。

 国は事業者支援として、無利子無担保融資などの資金繰り支援を実施。池田さんによると、土湯温泉でもこうした財政支援を受けている施設があるが、借り入れはあくまでも借金であり、返済の義務がある。

 また、宿泊費の一部を補助する「県民割事業」を6月末まで延長することを決定、さらに来月には訪日外国人観光客の受け入れを再開する方針だ。池田さんはこうした動きを歓迎し「お客さまが来なければ返済用の資金は集まらない。『Go To トラベル』の早期再開や外国人観光客誘客の支援など切れ目のない施策を打ち出してほしい」と強調する。政治に求めているのは確かな実行力だ。

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 「6月22日公示―7月10日投票」が有力視される参院選。福島選挙区(改選数1)には、新人4人が立候補を予定している。公示まで1カ月に迫る中、新型コロナや復興、地方創生など山積する本県の課題の解決に向けて取り組む県民が政治に望む姿を探った。