【参院選ふくしま・焦点】人口減/移住、安定した仕事あってこそ

 
廃校舎を活用した自然教育村会館内に事務所を構える「かね福」の星さん(左)と代表理事の目黒祐一さん。働き手確保の新たな取り組みが注目を集めている

 高齢化率が県内市町村で唯一、60%を超える金山町で、地元有志が国の認定を受けて始めた働き手確保の試みが根付きつつある。少子高齢化や人口減の問題は叫ばれて久しいが、県内人口も東日本大震災後の11年で20万人減り、4月には戦後初めて180万人を割った。矢も盾もたまらず新たな行動に出た有志の胸中にあったのは「このままでは地域を守っていけない」という強い危機感だ。

 事業協組、国の認定

 金山町の廃校舎に事務所を構える奥会津かねやま福業協同組合(かね福)。町内の飲食、建設、宿泊、キャンプ場、温泉施設など18事業者による組合で、季節ごとの需要に応じて複数の事業所の仕事を組み合わせ、年間を通じて働き手を派遣している。県内で初めて国の特定地域づくり事業協同組合制度の認定を受け、事業を始めてから1年がたつ。働き手となる社員は20~50代の7人で、うち4人は入社を機に県内外から町に移り住んだ。国の補助で給与を上乗せし、ボーナスや各種手当、社会保険、資格取得支援制度も充実。副業も可能だ。

 4月に入社した大越智貴さん(29)=郡山市出身=は中学生の頃から只見線のファンで、これまでの乗車回数は1000回を数える。派遣先の町観光物産協会では知識を生かし臨時列車での案内役などを務めており、いずれは只見川を手こぎ舟で渡る「霧(む)幻峡(げんきょう)の渡し」の船頭として独り立ちするのが目標だ。「ずっと好きで通っていた奥会津で安定して働ける場所がある」と知り、移住を決断したという。

 ほかの社員も、自然を生かしたアクティビティー事業や農家民宿の開業など、将来像を描きながら働いている。かね福事務局長で奥会津郷土写真家の星賢孝さん(73)は「安定した仕事と『ここだからこそできる』生き方や価値を創り出すことが重要だ」と語る。

 「広域的視点を」

 震災と原発事故で加速した人口減少は、会津や原発事故の避難地域をはじめ県内全域で深刻さを増している。雇用の確保は若者の流出を防ぎ、新たな活力を呼び込む上で欠かせないが、人口減を抑えるには、子育て支援や医療、教育環境など多角的に対策を進める必要がある。新型コロナウイルス感染拡大を機に地方移住への関心が高まる中、地方間でパイを奪い合うのではなく「広域的な視点で根気強く続けることが不可欠だ」と星さん。地方の大半が抱える待ったなしの課題だからこそ、政治の持つ責任は重い。(取材班)