物価高、企業努力「限界」 参院選へ「何とか緩和を」
7月10日投開票の参院選は、有権者がさまざまな視点から候補者の訴えに耳を傾けている。大きな争点の一つが「物価高対策」だ。消費者だけでなく、事業者にとっても死活問題となっている。仕入れ価格や経費の上昇分を料金に転嫁する動きが県内で徐々に広がってきたが、買い控えや客離れを招く恐れもあり、ジレンマを抱えている。
「次から次に値上げが続く。このままでは経営が厳しい」。福島市内でクリーニング店2店舗を展開するクリーンボーイ・キクタの社長菊田克己さん(52)は原油、原材料価格の高騰で経費が大幅に膨らみ、企業努力の限界を口にする。
クリーニング店に石油製品は欠かせないが、服の油汚れを落とすための石油系溶剤やプラスチック製ハンガーなどのコスト上昇が止まらない。さらに、アイロンの水蒸気や乾燥の燃料となる灯油代の高騰も経営を圧迫している。
資源エネルギー庁の調査によると、灯油の店頭価格は2020年6月に18リットル当たり1300円台だったが、ここ数カ月は1900円台と約8年ぶりの高値水準で推移している。政府は石油元売り会社にガソリンや灯油などの急激な高騰を抑えるための補助金を支給しているものの、ロシアのウクライナ侵攻の影響で高止まりの状況が続く。
同社は4月、クリーニング料金の1割程度の引き上げに踏み切った。顧客からはおおむね理解を得られているが、菊田さんは「実際は1割では足りず、2~3割ほど値上げしたかった」と本音を漏らす。
中小企業庁が5~6月に実施したアンケート調査ではコスト増加分を全て価格転嫁できた企業は13.8%にとどまった。消費者と接するサービス業などは特に苦慮している実態がある。
菊田さんが懸念するのは、物価高に伴う消費の落ち込みだ。「今は経済を動かすことが重要なので、誰もが恩恵を受けられる消費税の減税が有効ではないか」と強調する。
物価高の影響は、全国的に人気が高い喜多方ラーメンにも及ぶ。小麦の主要産地であるロシアとウクライナの戦争を背景に小麦の価格が上昇し、製粉会社から地元製麺所、ラーメン店へと値上げが連鎖している。
喜多方市の調査によると、ラーメン1杯50~100円の値上げが目立っている。市内ラーメン店が加盟する「蔵のまち喜多方老麺会」の理事長花見拓さん(39)は4月に自身が経営する「来夢」で1杯600円を650円に見直した。「『50円くらいはしょうがない』と声をかけてもらえるが、地元のお客さんは少し減ったかもしれない」と話す。その上で「麺やギョーザの皮は今後、さらに値上がりが予想される。急激な仕入れ価格の上昇には対応できない。何とか緩和してもらえるような施策をお願いしたい」と注文を付けた。
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