【参院選最前線ルポ<上>】商都での訴えに熱 見通せぬ「増子票」
新人5人による争いとなった参院選福島選挙区(改選数1)。自民党公認の元県医師会副会長星北斗(58)=公明党推薦=と無所属のフリーアナウンサー小野寺彰子(43)=立憲民主党、国民民主党、社民党推薦=が、事実上の一騎打ちを繰り広げている。NHK党公認の元山形県米沢市議皆川真紀子(52)、政治団体「参政党」公認の会社社長窪山紗和子(47)、無所属の元養護教諭佐藤早苗(62)も独自の戦いを展開。県民に訴えは届いているのか。各地をルポする。(文中敬称略)
商都・郡山市の市街地北部の内環状線沿い。星と小野寺が200メートル程度の距離で互いににらみ合うように事務所を構える。大きく候補者名を記載した看板で、行き交う人たちに立候補をアピールする。県内最大級の票田であると同時に、2人の居住地。遊説には自然と力が入る。
「生活を守るのは政治だ。政治の安定により明るい未来を切り開く。5年後、10年後の姿をしっかりと議論するための選挙だ」。星は公示日の22日、遊説の後半で郡山市に入り、事務所前で支援者に地域医療の充実や農業を取り巻く後継者不足などの課題解消に向けた思いを熱っぽく語った。
医療環境が整う郡山市でも中核を担う病院の理事長だけに、知名度は十分。郡山選対本部長の県議山田平四郎は「医療だけではない。枠にとらわれない政策を訴えることで、JA関係などの支援も受け、他候補を圧倒する」。24日にも再び地元入りするなど、地盤での大勝を描く。
小野寺も公示された22日、JR郡山駅前で推薦を受ける政党の代表と共に街頭演説。「今の政権は、生活者一人一人の環境が違っていることを理解していない」と批判し、物価高対策や働き手の確保などの必要性を強調しつつ「皆さんの声を国に届ける」と訴えた。
小野寺もラジオパーソナリティーとして郡山市を中心に活動してきた。声だけを聴いていた有権者に顔を見せることで、好感触を得ているという。「動きを『見える化』して浸透を図る」と2区選対幹事長の県議佐久間俊男。昨年の衆院選福島2区での野党統一候補の比例復活も追い風にしたい考えだ。
ただ、各陣営の熱が有権者に届くかは不透明だ。「選挙カーはよく通るが、候補者自身のことはよく分からない」。2人の事務所にほど近い美容院に勤める男性(40)はつぶやいた。「選挙が好きで、投票にも行くが、周囲で選挙の話は聞かない」。盛り上がりに欠ける現状に複雑な表情を浮かべる。
郡山市は、今参院選の出馬を取りやめ、一線を退く現職増子輝彦(74)の地盤でもあった。増子は特定の候補者を支援することはないとしており「増子票」の行方も選挙の動向を左右する。ある陣営の関係者は「どうなるかは有権者の考え次第。現時点でどう影響があるかは見通せない」と吐露した。
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