【参院選最前線ルポ<中>】浜通り復興貢献強調 地震続発で苦境
穏やかに波打つ海原とは対照的な、ひびの入った外壁やブルーシートで覆われた痛々しい建物の姿が目に飛び込んできた。景勝地として名高い相馬市松川浦。海辺にある旅館街は東日本大震災以降も度重なる地震で被災し、苦境が続く。参院選公示後初の週末を迎えた25日、選挙カーが市内を駆け巡った。住民は豊かな海の恩恵を受けて暮らす日常の再生を願いながら、候補者の訴えに耳を傾けた。
「廃業も覚悟した」。松川浦前の旅館の4代目・管野功(45)は3月の地震で傾いた建物を見て、心が折れかけた。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、巻き返しを図ろうと決意した矢先の被災だった。
地震から3カ月が過ぎても宿泊施設約25軒の大半が休業している。悩み抜いた結果、管野は再開を決意した。被災した中小企業などを対象にした「グループ補助金」の適用を政府が決定したことが再起を促した。
ただ、将来への不安は拭えない。東京電力福島第1原発で発生する、放射性物質トリチウムを含む処理水を来春にも海洋放出する政府方針の影響が気がかりだ。「流さざるを得ないのかもしれないが、風評は確実に起きる」と言い切る。旅館の売りは松川浦で水揚げされる新鮮な魚介類。「海に関わる全ての仕事が打撃を受ける。地元が求める『風評を起こさせない対策』を示してほしい」。管野は浜通りの住民の思いを代弁する。
福島選挙区(改選数1)で事実上の一騎打ちを繰り広げる自民党公認の元県医師会副会長星北斗(58)と、無所属のフリーアナウンサー小野寺彰子(43)は、週末にかけて相次いで相馬地方に入り、"浜通りとのつながり"をアピールした。
星は25日、選挙カーで南相馬市から相馬市、新地町へと北上。屋根が崩れたままの家屋が点在する地域を約4時間かけて回り「福島を守る」と声を張った。
「震災直後から浜通りの医療の復興に尽力してきた」。地元選対本部長の県議太田光秋は星と浜通りとの結び付きを強調する。選挙カーが医療機関の前を通るたびに、医師や看護師らが沿道に駆け付ける姿に陣営は手応えを感じた。医師として復興に貢献した実績を掲げ支持拡大を目指す。
小野寺は24日、南相馬、相馬、新地3市町で遊説。「復旧がままならない現状を目にした。困っている人の声をすくい取る」。相馬市中心部でラジオパーソナリティーとして培った"耳を傾ける力"を強調した。
選対本部長の衆院議員金子恵美は「ラジオを通して災害で苦しむ浜通りの住民と長く関係を築いてきた。復興の課題もよく分かっている」と胸を張る。陣営は浜通りの復興の歩みに寄り添い続けてきた経験を前面に浸透を図る考えだ。(文中敬称略)
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