地方創生、長期的視点で 参院選、移住促進「地道な施策大切」
参院選で争点の一つになっているのは、人口減少の克服と東京一極集中の是正を目指す「地方創生」の取り組みだ。参院議員は解散がなく、6年の任期があるだけに、腰を据えた政策立案力が問われる。「長期的な視点に立った政策を練ってほしい」。地方創生に挑む県内の関係者は、各候補がどのような具体策を掲げるかを注視している。
新型コロナウイルス禍でもにぎわいが戻ってきた東京・渋谷。JR渋谷駅に近いビル内にあるのが田村市の移住相談窓口「東京リクルートセンター」だ。昨年10月の開設以来、12人の田村市への移住が決まるなど一定の成果を上げている。
移住事業に携わる一般社団法人スイッチ(田村市)代表理事の久保田健一さん(39)は「全国どこでも産品開発などで地域の独自色を出そうとしているが、地域の人の温かさや魅力こそが移住の決め手になるケースが多い」と指摘する。
田村市が進める戦略は、東京リクルートセンターで首都圏への情報発信を強化する一方、市内の「田村サポートセンター」を拠点に移住を考えている人への支援や移住した後の生活を下支えするという2本柱だ。
相談に乗る中で久保田さんは気付いたことがある。「都市部で地方に関わりたいと思う人は多いのに、移住を前面に出し過ぎると気持ちが離れてしまいかねない」。だからこそ、補助金の分配など政策が一過性になりがちな状況に危うさを感じる。「すぐに移住に結び付かなくても地道な取り組みの継続が大切だ。長期的な視点のある移住施策を進めるべきだ」と求める。
県の調査によると、昨年度に県内に移り住んだのは1532世帯2333人で過去最多を更新した。しかし、県人口は180万人を割り、急速な人口減と過疎化が地域に働き手の確保という課題を突き付ける。
地域も手をこまねいているばかりではない。喜多方市では製造業や建設業、農業、宿泊業など10事業者が集まり、事業協同組合「ジョイフルワーク喜多方」を結成した。田舎暮らしに興味がある首都圏在住者らをさまざまな職種で働く「マルチワーカー」として雇用、加盟企業に派遣することで人手不足の解消につなげたい考えだ。
組合は7月の活動開始に合わせて3人を雇用する方針だ。理事長の荒川洋二さん(72)は「来年度は加盟企業を増やし、喜多方ならではのラーメン店や酒蔵などで勤務できるようにしたい」と展望する。
ただ、給与の一部には国の補助金を充てることを見込む。荒川さんは「地方は賃金が安くて人が集まらない」と首都圏との賃金格差を人手不足の一因に挙げる。地方に若者が就きたい仕事が少ない現状の打開が必要だとし「工業系の働き先が少なく、市外に出る人も多い。先進的な半導体部品の製造拠点を地方に持ってくるなど、国が先導して動いてほしい」と訴える。
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