多様性認め合う社会に 参院選、障害者や性的少数者への理解促進を

 
スーパーで野菜の品出しをする男性。障害があるが幅広い仕事をこなす。誰もが生きやすい社会の実現に向けて、障害者らへの理解をいかに広げていくかが問われている=いわき市

 新型コロナウイルス禍で社会が抱えるさまざまな問題が表面化した中、誰もが生きやすく、多様性を認め合う社会の実現を望む声が強まっている。障害のある人や性的少数者への理解はどうすれば進むのか。関係者は、多様性のある社会の構築のために必要な政策が、参院選で正面から論じられることを求めている。

 「雇用の状況は徐々に改善しているかもしれないが、環境は依然として整っていない」。NPO法人いわき市障がい者職親会理事長の石山伯夫さん(67)は、障害者の自立を後押ししてきた経験を基に雇用の現場を語る。

 国は障害者の社会参画に向け、民間企業や自治体向けに設定する法定雇用率を段階的に引き上げてきたものの、企業などが法定雇用率を達成した割合は全国で約半数にとどまる。いわき障害者就業・生活支援センターでも登録する就労希望者のうち46%の人の働き先が見つかっていないのが現状だ。

 何より求められるのは障害者への正しい理解だ。石山さんはNPOで活動するとともに会社で働いているが、その会社では目や耳などにさまざまな障害のある人が勤務しているという。「障害者手帳を持っている人は何もできないと思い込んでいる企業が多いが、必ずできる仕事はある」。こうした理解醸成は政治の課題だとして、「中小企業が障害者を雇用するとメリットが生じるようにすれば、さらに雇用は伸びると思う」と提言する。

 性的少数者を取り巻く社会的制度の不備も指摘されており、改善が急がれている。「LGBT」など多様な人たちが暮らしやすい社会の実現を目指す「ふくしまレインボーマーチ」実行委員長の広瀬柚香子さん(25)は「性的少数者を理解するのは難しいかもしれないが、否定もしないでほしい」と願う。

 広瀬さんは、都内でのイベントへの参加をきっかけに、本県にも活動を広げたいと2020年に実行委を組織。「福島で暮らす全ての人に、自分らしく生きてほしい」。コロナ禍で思うような活動ができない中、短文投稿サイト「ツイッター」を活用したオンラインのイベントを展開したところ「誰もが自分らしく生きられる世界に」「一人じゃないと思える」などと活動の趣旨に賛同する多くの投稿が寄せられた。今年10月には福島市で実際のイベントを開く予定だ。

 実行委に参画するジェンダーや教育社会学が専門の前川直哉福島大特任准教授(45)は「性的少数者は家を借りる時や就職活動などで悩むことが多い。性的少数者の存在を分かってもらうことで、問題解決のきっかけになる」と強調。その上で、「権利が制限されている人たちが自分らしく生きるためには、法整備が必要だ」と、政治が必要な役割を果たすことを求めた。