【参院選ふくしま・戦い終えて】自民、新人擁立 総力戦で奪還

 
議席奪還で決意を新たにする自民党県連の役員ら。本県の未来に向けた政策の実行力が問われる=11日午前、福島市

 自民党新人・星北斗の当選から一夜明けた11日午前、福島市の党県連会館に役員らが集まっていた。6年前の雪辱を期した激戦。事実上の野党統一候補に10万票近い差をつけ「悲願の議席奪還」を果たした余韻で表情が和む。総合選対本部長を務めた県連会長の根本匠は「まさに総力戦の勝利だった」と、候補者擁立からの半年間を総括した。

 自民が福島選挙区に新人候補を立てたのは15年ぶり。1人区になってからは初めてだ。それだけに陣営は党員・党友や143の支援・友好団体からなる組織への知名度向上に躍起になった。昨年12月の立候補表明から約200日間、星は前哨戦で県内を4巡、選挙期間中に2巡した。各地で支持者らを動員した大規模集会を重ね、陣営は震災後の医療復興や新型コロナウイルス対策に尽くしてきた星を「即戦力」と訴えた。

 県連幹事長の西山尚利は「半年間、特に震災以降の医療面での(星の)実績を全力で伝えてきた。それが子や孫を持つ世代を中心に届いたのが、一番の勝因ではないか」と分析する。地道な活動を重ね、西山がようやく組織への浸透に手応えを感じ始めたのは、公示を2週間後に控えた6月上旬ごろだった。

 この間、選挙戦の構図も二転三転した。当初は自民元職が立候補を検討し、保守分裂が懸念された。自民元職が比例に回ったことで、比例候補を擁立する公明党との間に一時、緊張が走った。5月上旬には無所属現職が出馬を取りやめ、支持票の行方に危機感が広がったが「組織基盤の強化を徹底したことで保守票をまとめられた」(県連幹部)。公明との選挙協力も従来通りの形で落ち着き、結果的には自民現職と野党統一候補が争った3年前とほぼ変わらない票差での勝利につながった。

 「予想以上に『地の利』を生かした選挙戦を展開された」と西山が省みるように、野党候補の出身地である喜多方市をはじめとする会津北部で後塵(こうじん)を拝したほか、無党派層への広がりに課題が残った。ただ「複数期にわたって活躍できる若い新人」を掲げて50代の星を擁立しただけに、党内で将来への期待は大きい。

 最終盤に本県の復興に尽くしてきた安倍晋三元首相が凶弾に倒れる事件が起きた。「(安倍氏の)遺志を引き継ぎ、一丸となって必ず復興を成し遂げる」と誓った西山。「ふくしまの命を守る」を掲げ、本県の未来に向けた政策を訴えてきた星もまた、42万票という県民の負託を胸に、復興のけん引役の一人として国政の舞台に立つ。

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 自民候補が新人5人の争いを制した参院選福島選挙区。事実上の与野党一騎打ちとなった選挙戦を振り返り、与野党の今後の思惑を探った。(敬称略)