富岡復興の一助に...古里で奮闘中 27歳の理容師・草野倫仁さん

 
古里にオープンした理容店で奮闘する草野さん

 富岡町出身の草野倫仁(ともひと)さん(27)は古里にオープンした理容店で復興の一助になろうと奮闘している。開店したのは2020年11月。帰還困難区域を除く町の避難指示解除後では、町内初の理容店だった。

 店名は「BARBER SHOP C.O.R(バーバー・ショップ・コール)」。英語で復興の輪を意味するサークル・オブ・リバイバルの頭文字を取った。「自分の店をきっかけに町に人が戻ってきてくれれば」と願いながら仕事に取り組んでいる。

 理容師になるきっかけは高校時代。友人と暗くなるまで練習に明け暮れるほどのサッカー一色の少年時代を送り、中学卒業後の進学先に富岡高を選んだが、卒業式の日に東日本大震災が発生した。

 友人とも離れ、川内村などで避難生活を送った後、福島北高など各地に分散していた富岡高のサテライト校に進学。福島市内の旅館を宿舎に寮生活を送り、サッカーに打ち込んだ。

 3年生になり自分の将来について考えていた時、当時けがの治療をしてくれたトレーナーから「手に職付けるのも選択肢の一つだ」と助言を受け、理容師になることを決めた。高校時代に校内の頭髪検査に向けて定期的に友人の髪を切っていた経験も後押しとなった。高校卒業後はさいたま市の専門学校に通いながら学校の系列店で修業を重ね、その後は栃木県佐野市の理容店で働いた。

 技術や接客マナーを身に付け、独立するか悩んでいた時期だった。両親から「富岡町に床屋がなくて困っている人が大勢いる」と聞かされた。「どうせなら必要とされている場所でやりたい」。佐野市の店を退職し、25歳の若さで古里での開業を決意した。

 人目につきやすいようにと、町中心部の公設民営商業施設「さくらモールとみおか」近くの国道6号沿いに店を構えた。店内は黒と茶色を基調としたアメリカンスタイルで、落ち着きのある空間に仕上げた。

 従業員は雇っておらず、全ての業務を一人でまかなう。大変な時もあるというが、「近くに店ができて良かった」「生活が楽になった」など客の温かい声がやりがいだ。刈り上げスタイルのカットを得意とし、その技術の高さからリピーターも増えているという。

 店のオープンから1年半。町内の生活基盤は整備されつつあるが、町に人が戻ってきている感じはしないという。だからこそ、草野さんは言葉に力を込める。「かつてのにぎわいを取り戻すため、僕は目の前のお客さんの心を満たし続ける」