常連に愛され48年 県庁近くの居酒屋「儀右エ門」 のれん下ろす

 
カウンターで常連客と思い出話に花を咲かせる八巻さん(右)

 県庁に近い福島市荒町の居酒屋「味処儀右エ門(ぎえもん)」が30日、48年掲げてきた店ののれんを下ろす。約半世紀にわたり店主を務めてきた八巻勇次郎さん(81)は「良いお客さんに恵まれた」と感謝の言葉を口にする。

 のれんをくぐるとカウンターが数席。小上がりの座敷や2階席もあるが、ほとんどの客はカウンターで刺し身や干物などをさかなに、会話を楽しみながら酒を飲み交わす。「場所を貸しているだけ」と八巻さんは言うが、常連客は「仕事でつらいことがあっても、ここがあったから救われた人は多いはず」と長く愛されてきた理由を語る。

 店は1974(昭和49)年6月3日に開店した。昔は県庁だけではなく、近くにキャバレーや新聞社の印刷所などもあり、さまざまな業種の人でにぎわった。20歳になった息子の誕生日にカウンターで初めての親子酒を交わした男性、月に1回開いていた旬の食材を食べる会、一時期営業したランチを楽しみにしていた女性客など。思い出話は尽きない。「家族で来てくれた人もいたけれど、印象に残るのはカウンターで横に並び、自然と友達になるお客の姿」と八巻さんは目を細める。

 新型コロナウイルス下も仕入れを続けたが、2年前に腰痛で入院。退院してからも足にしびれが残った。立ち仕事で体がもたないと、今年に入り店を閉める決断をした。

 閉店を知り、常連客らが連日店に詰め掛け、別れを惜しんでいる。八巻さんは30日もできるだけ長い時間店を開け、多くの人に感謝を伝えるつもりだ。(坂本龍之)