不器用な人に寄り添う 映画「窓辺にて」今泉力哉監督インタビュー

 
今泉力哉監督

 日常の心の機微をすくい取った恋愛映画に定評のある福島県郡山市出身の映画監督、今泉力哉(41)。最新作「窓辺にて」が全国公開中(県内ではイオンシネマ福島で上映中、25日からまちポレいわきで上映予定)、先日開催した第35回東京国際映画祭では観客賞を受賞した。今泉監督に新作とこれからについて聞いた。

 大人のラブストーリー

 脚本も自ら手掛けた「窓辺にて」は、稲垣吾郎演じるフリーライターの男性が、妻の浮気に気付いても何も感じない自身の感情に戸惑う姿を描いた大人のラブストーリーだ。

 「奥さんに浮気をされても感情が湧かない夫というテーマは以前から考えていた。穏やかなイメージのある稲垣さんなら、この感情を理解してくれると思い、長年温めていたアイデアを映画化した」と経緯を語る。

 浮気した妻を怒ったり問い詰めたりできない主人公の心の動きについては「この感情を知っている人にはすごく届くとか、『これは私だけが知っている感情だ』『なんでこの気持ちを分かる人がいるの?』と思ってもらえたら」と、作者としての思いを話す。

 多様な視点、肯定したい

 今作を含め、自身の作品の特徴を「王道の恋愛映画ではなく、日常にあるような話」と表す。それは「映画を"自分ごと"として見るもの、実際に隣で起きていそうな物語として捉えたい」からだと言う。

 創作にあたり「(世間には)"努力して成長して何かを手に入れる物語"が多いけれど、現実はうまくいかないことの方が多い。自分は、そんな、思うようにいかない人たちの視点で映画を作っている。積極的になれない人や、思いを伝えられない人の気持ちに寄り添いたい」と話す。

 加えて「映像やセリフが一つの答えになってしまう怖さは感じている。だから作中では極力、結論を決め付けないようにしたり、迷ったまま終わらせたりしている。たとえ結論を出してもそれは一つの選択で、他の視点も許容したい」。作品の解釈は観客に委ねたいという。

 「視点」「正解は一つじゃない」という言葉が繰り返されたのが印象的だ。「こうあるべき」や「普通」を疑い、多数派だけではないさまざまな視点を肯定する。そこには監督の優しさが見える。

 今後作ってみたい作品を聞くと、「『窓辺にて』のように、取るに足りない小さなことで悩んでいるような映画を、これからも作り続けていきたい」。多くのファンの心をつかむ今泉ワールドの作品がまだまだ見られそうで楽しみだ。

 「福島」いつかテーマに

 最後に、本県出身の映画監督としての思いも語った。「福島県の場合、避難先から戻ってきた人、避難先に定住している人、震災後に移住してきた人など、いろいろな立場の人がいる。さまざまな視点があって、誰も悪くないのにみんな悩んでいる。これは、いつか扱うテーマだと思っている。自分がやれることのような気がしています」(佐藤香)

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 いまいずみ・りきや 1981年生まれ。郡山市出身。安積高卒。2010年「たまの映画」で商業監督デビュー。近年の主な監督作品に「愛がなんだ」「アイネクライネナハトムジーク」「街の上で」「かそけきサンカヨウ」「猫は逃げた」など。23年2月にはネットフリックス映画「ちひろさん」(有村架純主演)の公開が控える。