83歳マスター生涯現役、南相馬の喫茶店...半世紀 客集う憩いの場

 
コーヒーを入れる吉田さん。客との交流を心待ちにしている

 創業から半世紀以上の歴史がある南相馬市の喫茶店「珈琲亭いこい」のマスター吉田至巴(よしとも)さんは、83歳となった現在も店に立ち、コーヒーなどを提供している。「亡くなっていく人も多いから、常連客の顔を見ると安心するんだよね」。開店当時の客が今も訪れる人気店でなじみの客の顔を思い浮かべ、客との交流を心待ちにしながら、コーヒーを入れ続けている。

 いこいは1970(昭和45)年に吉田さんが同市原町区で開店し、8年後に現在の場所に移転した。レンガ調の内装や温かい照明が昭和の面影を残すレトロな喫茶店だ。吉田さんを慕う客がカウンターで会話を楽しむ様子は店のよくある光景になっている。

 吉田さんは元々航海士で、喫茶店とは無縁の人生だった。大熊町出身で、小名浜水産(現小名浜海星)高を卒業後、小名浜港から船に乗り、世界中の海を旅していたという。

 転機となったのは、結婚し子どもが生まれた頃。「丘(陸)に上がって働かなければ、父親のいない子になってしまう」。海中心の生活をやめ、喫茶店経営を決意。浪江町の妻ミチ子さん(79)の実家から仙台市のコーヒー豆問屋に通い、40日間修業した。

 開店後、店では自家焙煎(ばいせん)の豆を使ったコーヒーのほか、看板料理の焼きそばなどを提供してきた。モーニングのほか、納豆定食など喫茶店には珍しいメニューも人気を集めている。

 「マイペースに、健康第一にやってきたのが良かった」と歩みを振り返る吉田さん。後継者がいないため、店の存続など不安な面もあるが「やめようと思ったことはないよ」ときっぱり。そう話す吉田さんの目には、店への愛着があふれていた。