50年愛された味守る 福島のまんさく食堂きょう閉店、バトンは孫へ

福島市野田町の「まんさく食堂」が28日、約50年の歴史に幕を下ろす。半世紀にわたって親しまれてきた店との別れを惜しむ声がSNS(交流サイト)などで広がっており、連日、長蛇の列ができている。店主の松山勇次郎さん(80)は「本当にありがたいけど、仕込みが大変だね」とうれしい悲鳴を上げる。一方、孫の赤間彩人(あやと)さん(29)は、新しい店を開き伝統の味を継承していこうと準備を進めている。
1974(昭和49)年10月。タクシーやトラックの運転手だった松山さんが31歳で看板を掲げた。友人の中華料理店で料理を学び、開業後はラーメンやホルモン定食、カツ丼などが人気を集めた。会社員や学生、家族連れなど多くの胃袋を満たし、独身者からのリクエストで営業開始前に目玉焼き定食を出すなど、時代とともにメニューも増えていった。
転機は数年前。一緒に店を守ってきた妻が病気で店を離れ、自身も働くのが体に堪える年齢になった。コロナ禍や物価高騰なども重なり、店を閉じると決意した。「やっぱり寂しいね。でも、『小学生の頃から食べてたよ』と話すお客さんが大人になった今も来てくれる。本当にうれしいね」。松山さんは、夢中で走ってきた半世紀という時の流れをかみしめる。
孫の赤間さんも祖父の味に親しんできた一人。閉店すると知って驚き、味を守りたいと思った。妻と2人の子どもがいて本当にできるか不安だったが、妻の後押しで迷いは消えた。「今では少なくなった『昔ながらの食堂』を守りたい。まんさく食堂のお客様にぜひ、食べに来てほしい」。福島市内で新たな店舗を探しながら祖父の店を手伝い、伝統の味を学んでいる。
「じいちゃんがいると心強いから、新しい店が出来たら厨房に座っててほしい」と話す赤間さんに、松山さんは快く応じる。「まだまだ老け込んでいられない。自分たちらしい店を作ってほしい。50年は続けてもらわないとね」とエールを送った。
「また食べられる日 楽しみにしている」
常連客からは閉店を惜しむ声が上がる。小学生の頃から通う福島市の20代女性は「家族みんなで食べた思い出もある。違う場所でこの味をもう一度食べられる日を楽しみにしている」と話す。同市の30代男性は10年以上通い、焼き肉定食が好きだという。「今の店がなくなるのは寂しい。50年も店を続けてきたことは、本当に尊敬する」と店主をねぎらった。
「まんさく」は花の名前が由来。住所は福島市野田町3の2の6。電話024・535・8140。28日の営業時間は午前11時~午後2時半、午後5時~同8時半。
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