震災×時の流れ 独特の世界観、新写真集 伊達の菅野純さん出版

 
菅野さんと愛用のカメラ

 写真家の菅野純さん(伊達市)が21日に、赤々舎から写真集「Planet Fukushima」を出版する。東日本大震災をきっかけにした時間の流れの変化をテーマにした本作は、伊達市を中心に県内各地の人や風景が独特の世界観で広がっている。

 菅野さんは伊達市霊山町出身。保原高卒業後に上京し、デザイナーを経てフリーカメラマンとして活動を開始した。菅野ぱんだの名前で発表した中国で撮影されたパンダ写真集は、ブームを巻き起こした。これまでに多数の写真集を出版。広告や雑誌の仕事をしながら、作家性の高い写真を発表してきた。

 東日本大震災以降は、東京と福島を往復しながら人や風景を撮り続けてきたが、「ちゃんと撮れていない」気がして、2018(平成30)年から伊達市に拠点を移した。

 写真集は観音開きの二部構成で、広げると4枚を同時に見ることができる。本編は緑に覆われた野原の写真から始まる。この場所は除染廃棄物の仮置き場として土のう袋が運び込まれ、季節が変わっていく様子が写し出される。

 それらの写真の間を縫うように、地元の何げない風景や親戚、友人のポートレートが一見脈略なく繰り返し登場する。ほとんどの写真がフィルムで撮影され、独特の柔らかなトーンで表現されている。

 本編には何の説明もないが、別パートでは同じ日に同じ場所で撮られた線量計の写真が日付入りで示される。日付を見ると時系列順ではなく、時に震災前の写真も混じる。

 菅野さんが震災後も撮影を続けていて気がついたのは、人によって時間の感覚が違うことだという。それは時間の長さや速さなどに表れ、時には時系列が前後したりすることもある。「時の流れ(の感じ方)が違うということは、震災の意味も人それぞれなのではないでしょうか」。税込み7700円。

230304news701-2.jpg写真集「Planet Fukushima」の一枚