震災体験「手話で伝えたい」 特別支援学校教員の根本さん

 
手話を通じて震災の記憶を伝える根本さん

 手話で記憶を伝承したい―。聴覚障害がある特別支援学校教員の根本和徳さん(30)が、依頼があれば手話を通して東日本大震災の記憶や自身が取り組む伝承内容などを伝える活動に取り組んでいる。「手話も一つの言語。しっかり伝えることができる。聴覚に障害がある人が活躍できる幅を増やしていきたい」と意気込んでいる。

 根本さんは伝承活動をする際、通訳とともに行うが、通訳などを置かず、手話と表情のみで行う「手話語り」を実践する時もある。「周りに合わせることなく、自分の思っていることをそのまま表現できるから」という。一方で「社会には音や声があり、思っていることを手話で表現できない難しさもある」と苦労を明かす。

 根本さんは2月17日、広野町で開かれたトークイベントに参加。高校3年生の時にバスに乗り、東北道国見サービスエリアで休憩していた際に被災し、地震で体が大きく揺れた様子などを5分ほどで表現した。言葉はなく、手話と表情のみだったが「地震の恐ろしさが伝わってくる」と来場者は話した。根本さんによると、県内では手話を用いた伝承活動や観光案内は十分ではないという。「手話を発展させ、社会に良い影響を与えていきたい」と語った。

 この日のイベントは、東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)の青砥和希常任研究員と実施。要支援者への対応など、震災後あまり語られてこなかったことを「空白」と捉え、議論した。