38年、学生の成長見守る 福島「味処天山」、惜しまれつつ31日閉店

 
「たくさんの人にお世話になった」と感謝し、のれんを見つめる鈴木さん

 福島市太田町の食堂「味処天山」が31日でのれんを下ろす。店主の鈴木元晴さんが1月で80歳を迎えたのを区切りに閉店を決めた。連日、名残を惜しむ多くの常連客が訪れている。

 鈴木さんは同市飯坂町の国道13号沿いにあった飲食店「レストハウス天王」の支配人や料理長を経て、1985(昭和60)年に食堂を構えた。当時は福島医大などの学生が多く来店し、盛りが良い料理を提供しながら、わが子のように成長を見守ってきた。「立派な医者になった今でも食べに来てくれる」と表情を緩める。

 一方、周辺にファミリーレストランなどが出店し、創業から38年間で経営環境は大きく変わった。売り上げはピーク時の3分の1以下に減少。学生らの懐事情を考慮し、なるべく値段を据え置いてきたが、物価高で食材の仕入れ費用が上昇したため利幅が縮小した。市内では昔ながらの食堂が次々と姿を消している。

 鈴木さんは「食堂の仕事は休みが少なくて肉体的に大変。それでも、お客さんに『うまい』と言ってもらえるのがうれしくてここまで続けられた。長い間、お世話になりました」と万感の思いを口にする。

 店の住所は福島市太田町27の10。31日までの営業で日曜日は定休。営業時間は午前11時~午後2時半、午後5時~同7時半。電話024・534・0155