休業寿司店をパン店に 南相馬小高区移住の森山さん改修、開店へ

 
(写真上)コーヒーを入れる森山さん。「青葉寿司」時代のお品書きはカウンターに当時のまま残した、(写真下)日本各地の店から取り寄せたパンが並ぶ店内

 東京電力福島第1原発事故の影響で休業している南相馬市小高区の寿司店がパン店に生まれ変わる。大阪市から南相馬に移住したITエンジニア森山貴士さん(36)が自分の手で改修し、住民ら延べ200人が工事に協力してきた。「小高のランドマークを残したかった。地域住民が『帰還して良かった』と思えるような場所でありたい」。思いのこもった店は7月1日、グランドオープンする。

 改修したのは築40年の「青葉寿司」。JR小高駅に近く、原発事故で10年間空き店舗となっていた。大きな看板が特徴で震災前は住民の集会場所の役割も果たした。「廃虚じみてしまうのはもったいない」。店の輝きを取り戻そうと、森山さんは改修を決意。2020年に着手すると、住民や通りがかった旅行者が次々に手を貸してくれた。

 店名は青葉寿司をもじった「アオスバシ」。1階はパンやコーヒーを提供するカフェスペースだ。若者も高齢者も楽しめるよう品ぞろえを工夫した。全国各地のパンの名店から仕入れ、冷凍してある。焼き上がり直後に冷凍しており、常温と比べ日持ちしやすい。2階はコワーキングスペースで、仕事場として利用できる。

 プレオープンした24日、青葉寿司の元店主の三上幸信さん(57)=栃木県に避難=がアオスバシを訪れた。三上さんは「手つかずで店を置いて行ったのが心残りだった。名前や看板を残してくれてありがたい」と感慨深げだった。

 森山さんは「1階のカフェは地域住民が日常で使い、2階は外から来た人にとっての仕事場に。地域住民と移住者がつながる接着剤を目指したい」と夢を語った。

 営業日は火~土曜日。時間は午前11時~午後4時。森山さんが小高区で経営していたカフェ「オムスビ」はアオスバシに移転する。

230627news701-2.jpg