福高応援団の伝統守る 唯一の団員根本さん 初陣白星で飾る

伝統ある福島高梅章(ばいしょう)応援団に4月、115代目の団員として1年生の根本凜さん(15)が入団した。一時期は15人以上いた団員だが、現在は女子の根本さんただ一人。「応援団の伝統を途絶えさせたくない」と入団を決意した根本さんは、甲子園を目指して熱戦を繰り広げる野球部員にスタンドから熱いエールを送る。
「頑張れ、頑張れ、福高」。放課後の校舎に、芯の強い根本さんの声が響く。たった一人の団員という状況で、周囲に応援歌を歌える人がいない。自身のスマートフォンを使って応援歌の音源を流しながら、声の出し方や振り付けを覚え込む日々を送っている。
入団のきっかけは入学後、すぐに訪れた。新入生として応援歌講習に臨んだ時、通常は応援団から教わるが、団員がいないため3年生が臨時団員として指導役を務めていた。「私が入らなければ団員はいなくなってしまう」。そんな状況を見て根本さんは応援団に入ることを決めた。
日々の練習では、大学生となった元団長らが指導してくれることもあるが、基本的には一人で取り組む。炎天下の中で声援を送り続ける体力を付けるために毎日、近くの県立美術館の外周1キロを走ったり、自宅で腹式呼吸の練習を重ねたりするなど、試行錯誤しながら独学でメニューを考えている。顧問の菅野陽介教諭(39)は「真面目で責任感が強い。あまりプレッシャーに感じず、自分のペースでのんびりやってほしい」と優しく見守っている。
第105回全国高校野球選手権記念福島大会が8日に開幕し、福高は11日に初戦を迎えた。4年ぶりにスタンドでの声出し応援が解禁され、根本さんらのエールを受けて打線が躍動。五回に打者16人で一挙12点を挙げて快勝し、根本さんも応援団としての初陣を勝利で飾ることができた。
福高は16日、いわき光洋との2回戦に臨む。「自分の出せる力を全て出し切って応援する。選手も全てを出し切ってほしい」。野球部の背中には、力強く、頼もしい応援団がついている。