60歳で切り絵に魅了 須賀川の中田さん 求め続けた達成感

風景や花、動物、一見すると絵のようだが、どれも細部まで丁寧に表現された切り絵だ。須賀川市の切り絵作家中田誠さん(71)の手からは繊細で独創的な切り絵作品が生み出される。中田さんは「ほかの人が思い付かないような作品を作りたい」と、日々挑戦を続けている。
切り絵と出会ったのは60歳のころ。友人から切り絵の下絵を渡されたことがきっかけだった。「やってみるか」。最初は興味本位だった。しかし切り終わった時の達成感と、一枚の紙が作品になった時のうれしさから、あっという間に魅力に取り付かれた。
1年が過ぎた頃、これまで感じていた達成感が得られなくなった。「オリジナルを作れば、また達成感が味わえるかもしれない」。そう考えた中田さんは独学で切り絵を勉強し始めた。プロの切り絵作家の作品を細部まで観察。以前手がけた作品にさらに手を加えて満足のいくレベルまで研究を重ねた。
水彩画の手法も生かし、白黒以外の色鮮やかな作品も手がけ始めた。最近では立体作品にも取り組んでいる。
個展も開くようになった。来場者が、自分の作品の前で目を輝かせていることに気が付いた。「お客さんに楽しんでもらえるような作品を作りたい」。個人で楽しむ目的の作品作りから、人を楽しませるための作品作りに変わった。
一つの作品が完成するのに、長くて約3カ月かかることもある。それでも中田さんは手を抜かない。「魂を込めている。手を抜いたところは見ている人にもばれちゃうからね」と笑う。「見ている人をあっと驚かせるような作品を作りたい」。中田さんから生み出される作品にこれからも目が離せない。
(千葉あすか)