絵本「トットちゃんの15つぶのだいず」 挿絵は松本春野さん

戦中の食糧難、親心を絵筆に
黒柳徹子さんの自伝的小説「窓ぎわのトットちゃん」の主人公トットちゃんが、食糧難の戦時下を前向きに生きる姿を描いた絵本「トットちゃんの15つぶのだいず」(講談社、1760円)が7月に発売された。絵を担当したのは、福島民友新聞社が東日本大震災10年に合わせて刊行した絵本「ぼくのうまれたところ、ふくしま」の作者で絵本作家の松本春野さん。子を思う親の思いを絵筆に重ね、戦争の悲惨さが現代の子どもにも伝わる絵本を作り上げた。
■黒柳さんの体験
本作は、黒柳さんが昨年の終戦記念日に開いた「ハートフルコンサート」で披露した「戦争の最後の方では1日の食べ物が大豆15粒だけだった」というエピソードが原案。母親から1日分の食料として大豆15粒を持たされ学校へ通うトットちゃんが、逃げ込んだ防空壕(ごう)の中で大豆を全部食べてしまおうかと考えたり、家族が空襲を逃れ無事であることを知りほっとしたりする日々を送り、国連児童基金(ユニセフ)親善大使となるまでが描かれた。
過酷な戦争がテーマの絵本だが、作者柏葉幸子さんの明快な文章と、松本さんの明るい色調の絵が重々しさを和らげている。松本さんが「子どもが知っているものを描くことで、知らない戦争の悲惨さを引き立たせた」と話す通り、洋風の家で家族と食卓を囲むトットちゃんや、楽しそうな学校の様子など、今の子どもたちが身近に感じる風景も多く登場する。
■母の思い 表情に
自身も小学生の娘の母であり、柏葉さんも、講談社の担当編集者も女の子の母。「チーム全員が、トットちゃんの母の気持ちを想像してこの絵本を作ろうという思いだった。3人で涙しながらの打ち合わせもあった」と明かす。
挿絵は家族のだんらんなど幸せなシーンから描き、その平和を守る気持ちで、空襲などのつらい場面へと創作を進めた。トットちゃんの母が15粒の大豆を手渡す場面は、空襲で離れ離れになるかもしれずわが子に1日分の大豆を託さざるを得ない母の気持ちを、その表情に表した。
松本さんの祖母は、「窓際のトットちゃん」の挿絵を描いた画家いわさきちひろさん。黒柳さんとは長年交流があり、絵本化に当たりたくさんのことを教えてもらったという。その様子から「黒柳さんはあの時代を今の子どもにしっかり伝えてほしいんだと強く感じた」と振り返る。
■温かい光も
「私は戦争を経験していないが、平和の対比で戦争を描くことならできると思った」と松本さん。「二度と開きたくない戦争の本ではなく、温かい光が最初と最後に見える絵本になった。誰かと一緒に読んで、戦争がどんなものだったのか家族で話し合ってほしい」と思いを語った。
9月18日 松本さん講演会
松本春野さんの講演会「絵本の世界から、子どもの未来に翼を」が9月18日午後2時から、松本さんがアトリエを構える猪苗代町体験交流館「学びいな」で開かれる。入場無料。予約不要。絵本販売とサイン会も予定。問い合わせは小林栄顕彰会事務局(電話090・7930・0901)。
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