運動の足跡残して、四倉「国有地払い下げ記念の碑」保存の動き

 
(写真左)石碑の写真を見つめ、肩を落とす佐々木さん (写真右)撤去予定の倉庫に隣接して建てられている石碑

 いわき市四倉町にある石碑「国有地払い下げ記念の碑」を保存しようと一部の住民が動き出した。石碑は地域の歴史を今に伝えるもので、父親が払い下げ運動で中心的な役割を果たした同市四倉町梅ケ丘南区長の佐々木寛さん(77)は「歴史的価値の高いもの。父の実績を残してほしい」と話している。

 石碑は、四倉海岸沿いに広がる国有地が民有地へ払い下げられたことを記念して1966年に建てられた。当時は太平洋戦争後で深刻な住宅不足だったため、当時の町長を中心とした有志らが国有地の一部を開墾した。しかし、居住者間で借地を私有化したいという動きが高まり、有志らによって「旭会」を結成。旭会をはじめ地域住民らが団結し、5年の歳月を経て払い下げが実現した。

 石碑には「居住者の団結と熱意によるもの。石碑を建てて後世に伝える」と刻まれている。いわき地域学会幹事の小宅幸一さん(71)は石碑の歴史的価値について「宅地化のための払い下げは市内には存在しないので珍しい石碑だ」と話す。

 佐々木さんの父は同会の代表として、国有地払い下げ運動に尽力した。「石碑には、父と仲間たちの努力と偉業の成果が詰まっている」と寛さんは話す。石碑は現在、市有地にあって隣接する倉庫が老朽化したため、市は地元住民に倉庫とともに撤去する方針を示している。市は「地域住民の意見を踏まえて判断したい」としている。