生き物調査、コメ作り応援 「福島虫の会」3人追った書籍発刊

 
「ぼくらは田んぼ応援団! 福島ゲンゴロウ物語」を手にする(右から)三田村さん、平沢さん、吉井さん

■「ぼくらは田んぼ応援団! 福島ゲンゴロウ物語」

 福島虫の会の3人を追ったノンフィクション「ぼくらは田んぼ応援団! 福島ゲンゴロウ物語」(谷本雄治さん著、汐文社)が4日、全国の書店などで発売された。東日本大震災後、生き物調査を通して風評被害を乗り越え、本県の農業を支えようと奮闘する姿が描かれている。

 県農業総合センター浜地域研究所(相馬市)が2021年3月に発表した調査結果で注目すべき事実が判明した。東京電力福島第1原発事故による避難指示などで、営農を一時中断した水田で営農再開後に水生昆虫などが多数確認され、生物の多様性が保たれていることが分かったのだ。

 調査の責任者は同研究所の三田村敏正さん(63)=伊達市=で、8市町村の約40枚の田んぼを3年にわたり調査した。三田村さんは本業の農業研究者とは別に長年、昆虫の調査・研究に取り組んでおり、震災後も津波跡地などの水生生物調査を続けてきた。

 「記録の重要性を改めて思い知った」と三田村さん。そこで、誰もが手に取って調べられる「水生生物ハンドブック」の制作を思いつき、虫の会の吉井重幸さん(68)と平沢桂さん(47)に声をかけ、ハンドブック作りに着手した。3人は制作のために全国を駆け巡り約4年の歳月をかけた待望のハンドブックが17年6月に刊行された。

 三田村さんは、農家にも自分の田んぼにどのような昆虫が生息しているのか調べてほしいと願う。希少な生物がたくさんすむ田んぼは、環境の良さを証明することになり風評払拭に役立つと考えるためだ。千葉県に住む谷本さんは「多様な水生昆虫がすめるような環境でコメ作りをする農家の人たちに自信を取り戻してほしい」と著書に込めた思いを話す。小さな虫が本県の田んぼに希望をもたらす―。本作は新しい視点から本県復興を応援する一冊になっている。