増子輝彦氏、参院自民会派入り 元民進党幹事長、与野党に波紋

 

 野党再編で新党に加わらず、無所属の増子輝彦参院議員(73)=福島選挙区=は21日、自民党と無所属の議員でつくる参院会派「自民党・国民の声」に入った。26日召集の臨時国会から活動する。増子氏は1994(平成6)年の自民離党後、民進党幹事長など民主党系の勢力で要職を歴任しており、一転して与党への接近姿勢が鮮明になったことで県内政界に波紋が広がった。

 増子氏は21日、福島民友新聞社の取材に「政党は無所属を続ける」と述べた上で、会派入りの理由を「震災と原発事故からの復興に加え、コロナ禍で福島に課題が山積している。反対するだけの野党ではなく、与党的な立場で国会活動に取り組み、一つ一つ課題を解決したい」と説明した。

 改選数が2から1に削減された2016年の参院選福島選挙区では、民進に所属していた増子氏が野党統一候補として立候補し、自民現職を破って3回目の当選を果たした。増子氏は二大政党による政権交代可能な政治の実現を訴え、その後の国政選挙でも共産を交えた野党共闘の旗振り役を担ってきた経緯がある。

 それだけに立憲民主党県連の亀岡義尚幹事長は「大義と構図を自らひっくり返し、一票を託した有権者を裏切る行為だ。政治不信を助長する禁じ手で、信じられない」と突き放した。増子氏を支援してきた連合福島の今野泰会長は、協力関係の解消に向けて次回の執行委員会に増子氏の推薦取り消しを諮る考えを示した。

 衆院議員の任期満了まで1年を切った中、解散総選挙への影響も懸念される。立憲民主、社民両党と県議会第2会派の県民連合、連合福島でつくる4者協議会は次期衆院選福島2区の人選を増子氏に託していたが、今野会長は「議論は白紙になると思う。新たな気持ちで協議を再開し、候補者選定を急ぎたい」と語った。

 野党共闘の継続に向け、亀岡幹事長は関係団体に経緯を説明し謝罪する考えを示したが、共産党県委員会の町田和史委員長は「4年前の合意確認書には『安倍政権の打倒をめざす』と記載されている。菅政権は安倍政権の継承を掲げているにもかかわらず県民を裏切るのであれば、議員を辞めるべきだ」と語気を強めた。

 一方、自民党県連も困惑を隠せない。渡辺義信幹事長は「突然のことで驚きを禁じ得ない。県連としては反対だ」との談話を発表、増子氏の自民会派入りに反発した。今後、事実関係の確認を急ぐ考えで、対応を検討中としている。

 県連内は「会派入りも含め、入党もあり得ない」と冷ややかで、改選期を迎える22年夏に向けて神経戦となりそうだ。渡辺幹事長は「党内に混乱を招かないよう、丁寧に取り組んでいかなければならない」とし、増子氏の動向を注視する構えだ。