菅野典雄飯舘村長が26日「退任」 思いやり...村づくり『原点』

 
復興業務の拠点となった村役場庁舎を背に「今後は一村民として村の行く末を見届けていきたい」と語った菅野村長=飯舘村役場

 飯舘村の菅野典雄村長(73)=6期=は26日、任期満了に伴い退任する。4期目に震災と東京電力福島第1原発事故が発生、全村避難となった村の復興に向け、陣頭指揮を執った。退任を前に福島民友新聞社のインタビューに応じ「大変だったことだけが全てではない。震災によって新たな出会いがあり、新しい考え方も手に入れることができた。多くの支援に感謝したい」と在任期間を振り返った。

 ―原発事故に伴い国が村全体を計画的避難区域に指定し、全村避難となった。
 「全村避難と聞いた時はまさかと思った。村をゴーストタウンにしない方法はないかと熟慮した結果、車で1時間以内の避難を打ち出し、コミュニティーを維持することを重要視した。行政区ごとに小まめに会合を開くこともでき、その後の復興を進める上で、大きなポイントとなった」

 ―2017(平成29)年3月に帰還困難区域を除く村の大部分の避難指示が解除された。今後の課題は。
 「課題が多くある中で、地域交流の拠点となる道の駅や、子育て世代の定住を図る子どもの遊び場など、村民に帰村してもらえるような条件整備を進めてきた。今後は住民福祉や生活環境の一層の充実が必要になってくるだろう」

 ―教育行政には熱い思いをささげてきた。
 「人の成長が村全体の成長につながる。私は『子どもは未来からの留学生』と思っている。子どもたちは素晴らしい潜在能力を持っている。公民館長としての経験などから、教育に力を入れなければ将来を担う子どもは育たないということを改めて考えさせられた」

 ―村民や職員に伝えたいことは。
 「復興を考える上で、元の村に戻すことは容易ではない。新しい村づくりを進めていくという考え方をぜひ持ってほしい。村民同士、心のシェアをしながら、思いやりを持つことが村づくりの原点になる。飯舘の『までいライフ』が日本の20、30年後の方向性になるのではないかと思う」

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 かんの・のりお 飯舘村出身。帯広畜産大卒。村公民館長などを経て1996(平成8)年の村長選で初当選。73歳。