街頭演説が「主戦場」 田村市長選ルポ、政見浸透へ現新2氏模索

 

 任期満了に伴う田村市長選は11日の投開票に向け、再選を目指す現職の本田仁一(58)と新人で元市議の白石高司(61)が火花を散らしている。市民病院開設や企業誘致など1期目の実績と市政の継続を訴える本田と、農業と福祉の連携や財政の健全化など「刷新」を掲げる白石が繰り広げる激戦に、市民が出す答えとは。

 5日午前の田村市。雨が降ったりやんだりとはっきりしない天気の中、本田、白石は各地区の集落や商店街などで精力的に街頭演説を繰り広げた。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、両陣営ともミニ集会や決起集会など、大勢の人が集まる会合を自粛しており、街頭演説こそが"主戦場"となっている。傘を手にする有権者の前で、2人はそれぞれ熱っぽく訴えた。

 「前回に比べ、選挙に対する市民の関心の薄れを感じる」。陣営関係者が慌ただしく出入りする本田の選挙事務所で、選対本部長の遠藤正徳(71)は危機感を募らせる。会合の自粛により、盛り上がりを直接感じられない選挙戦。「みんなが主役」をスローガンに、産業団地造成や企業誘致など1期目の実績を訴えるが、「街頭演説の数をこなし、投票を呼び掛けるしかない」。後援会組織をフル稼働させ、前回並みの得票を狙う。

 一方、刷新を前面に押し出す白石陣営。選挙カーや事務所には「チェンジ」の文字が躍る。「公平公正」をテーマに、市内全域に平等な市民サービスが行き渡るよう訴える。連合後援会長渡辺善二郎(73)は「企業誘致の前に、今住んでいる人の豊かさを考えている」と白石の思いを代弁。昨年11月に立候補を表明したものの、新型コロナの影響で告示前の活動には頭を悩ませただけに投票日までのわずかな期間も浸透に躍起だ。

 大きな争点の一つは「人口減対策」だ。原発事故に伴う避難指示が出された田村市都路地区には、住民の避難の影響もあってか、空き家が少なくない。「人がどんどんいなくなっている。地域で何かしようにも、人が少なく大変だよ」。同地区に住む80代女性は、人通りの少ない道路を見つめながら、ぽつりと本音を漏らした。「長い目で田村の未来を考えてくれる候補者を選びたい」。新型コロナ対策に追われる現在と、市の発展につながる将来に向けた施策の両立を、有権者は求めている。(文中敬称略)