【迫る衆院選・停滞する経済】「我慢の時」いつまで...募る不安

 
新型コロナウイルス感染拡大の影響などで人通りのない夜のJR郡山駅前

 午後8時すぎの郡山市。県内経済をけん引する「商都」の夜の街からは人の往来が消え、酔客でにぎわう平時の面影はない。「コロナが広がってからは目に見えて人通りが減った。この状況がいつまで続くのか」。同市虎丸町で飲食店「福味食堂」を営む遠藤多加夫さん(51)は、新型コロナウイルスの感染拡大による「非日常」が「日常」に置き換わってしまった地域の窮状を代弁する。

 同市では7月に入って感染が再拡大し、歩調を合わせるように県全体でも過去最悪のペースで感染者数が急増した。県は今月5日に県全域に「非常事態宣言」を発令したが、郡山市ではそれに先立つ7月26日から、酒類を提供する飲食店などに特措法に基づく営業時間の短縮を要請していた。

 創業約50年の福味食堂は昼は食堂、夜は居酒屋として商都の食を支えてきた。しかし、コロナの拡大後は客足が鈍り、これまで4度の時短要請もあって売り上げは平時から8割近く落ち込んでいるという。県の協力金では、売り上げの減少分を穴埋めし切れない。遠藤さんは「感染拡大を抑えるための要請ならば、もっと手厚くしないと従わない店が出てくる」と、補償の上乗せを求める。

 東京商工リサーチのアンケート(6月1~9日)によると、5月の売上高がコロナ禍前の2019年と比べて「落ち込んだ」と答えた県内企業は64.3%に上る。特に郡山市は、19年10月の東日本台風(台風19号)に伴う企業被害額が約625億円と県内で突出して多く、感染拡大の長期化は飲食店にとどまらない幅広い業種に暗い影を落とす。

 台風被害に追い打ち

 東日本台風で甚大な被害が出た郡山中央工業団地に本社を構える共栄印刷は、床上約50センチまで浸水し、機器の修理や建物の修繕に約3億3000万円が必要となった。補助金を活用しても数千万円の支出を強いられ、操業の体制がようやく整った直後、追い打ちを掛けるように新型コロナが拡大した。イベントや飲食店関係のチラシの受注が減り、約2割減った売り上げは今も回復しないままだ。

 「台風にコロナが重なり、『今は我慢の時』と言い聞かせ始めてから、ずいぶん時間がたった」。この2年弱を振り返る社長の有賀隆宏さん(53)の胸から懸念は消えない。「また水害が起きたり、さらに感染が拡大したりしたら、この地域はどうなるのか」。その不安は、日に日に強まっている。