【迫る衆院選・未来の選挙区】福島の今を...地域の声が届くように

 
JR新白河駅がある西郷村は前回衆院選で福島4区に編入された。再度の区割り変更後の選挙区はまだ見えない

 前回2017(平成29)年の衆院選で福島3区から会津で構成する4区に編入された西郷村。「会津に編入された時は違和感があった」。同村で子ども食堂などを運営している渡辺啓二さん(42)は振り返る。編入決定当時、「村民の気持ちを軽視している」など戸惑いの声が上がった現在の区割りも、秋までに行われる次期衆院選を含めたわずか2回で再び変更されることが濃厚だ。

 今年6月に発表された20年国勢調査の速報値によると、本県は現行の5選挙区から「1減」となる見通しだ。衆院選挙区画定審議会(区割り審)が来年6月までに見直し案をまとめる方針で議論を開始した。具体的な区割りの検討はこれからだが、本県については福島、会津若松、郡山、いわきの4市を中心に再編されるとみられている。

 4市を除く白河、須賀川、田村3市など県南の市町村で構成する3区。人口が多い都市と同一の選挙区になれば、地域の声が「少数意見」となる懸念がある。東京電力福島第1原発事故で避難指示が出た田村市都路町の50代女性は「国と地方の橋渡し役が国会議員。選挙区が広くなることで、人口減が進む地域など細部まで目が届くのか心配。私たちの生活がどうなるのか、全く分からない」と困惑。須賀川市の商工関係者も「議員の基盤により、地域の意見の吸い上げに偏りが生まれる可能性がある」と不安視し「区割りを変えるにしても、地域性を考えた分け方をしてほしい」と求める。

 地域性を巡っては小選挙区制導入時、1区と5区に分割された浜通りでも議論が巻き起こった。浜通りの人口は、本県が定数4となった場合の議員1人当たりの人口とほぼ同じ約45万人。「選挙区が変わる不安はあるが、地元の声が届きやすくなるのでは」。南相馬市の自営業高田江美子さん(37)は、復興への課題を解決していく上で「浜通りで一つの選挙区」を訴える。

 一方、東北中央道「相馬福島道路」の全線開通などで、県北と相双地方の結び付きが強まっているのも事実だ。相馬市の会社経営小松隆さん(79)は「一つの経済圏として見ることができるようになった」と現行の区割りを支持する。

 3万人以上が避難生活を続ける中、「原発事故以降の国勢調査が本県の実態を反映していると言えるのか」との指摘もある。5選挙区で争われるのは事実上、最後となる次期衆院選。震災、原発事故から10年の時を過ごした本県の有権者が「福島の今」を示す機会でもある。(おわり)