いわき市長に新人・内田広之氏 現職・清水氏ら3人破り初当選

 
初当選を果たし、花束を手に喜ぶ内田氏(右)と妻葉子さん=5日午後8時10分ごろ、いわき市平の選挙事務所

 任期満了に伴ういわき市長選は5日、投票が行われ、即日開票の結果、無所属の新人で元文部科学省室長の内田広之氏(49)が4万5885票を獲得し、無所属で現職の清水敏男氏(58)=2期=ら3候補に1万7000票以上の大差をつけ初当選を果たした。市長選にはこのほか、いずれも無所属で新人の元衆院議員宇佐美登氏(54)、前常磐共同ガス社長猪狩謙二氏(59)が立候補した。

 内田氏は新型コロナウイルス感染対策や教育政策の推進による人材育成を強調。現職への批判票を取り込み、県内最多の人口を誇る中核市のかじ取り役を託された。投票率は47.68%で、前回を1.45ポイント下回り過去2番目に低かった。

 内田氏の任期は28日から4年。当選証書付与式は6日午後1時半から、市役所本庁舎で行われる。

 当日有権者数は26万7281人(男性13万500人、女性13万6781人)。

 官僚経験、手腕に支持

 【戦いの跡】新型コロナウイルスの感染拡大や相次ぐ自然災害の発生で閉塞(へいそく)感が漂う中、変革を望む声が強まり、官僚として培った内田氏の手腕と経験に期待が集まった。

 内田氏は昨年12月に文部科学省を辞職し、他候補に先駆け名乗りを上げた。省庁での経験を踏まえた実行力と、国とのパイプの太さを強調。工業系大学の誘致や、浜通りに整備される国際教育研究拠点と連携した地域経済振興策などの公約を掲げ、支持を広げた。

 内田氏を含め3氏による保守系分裂の構図となった。間近に控えた衆院選をにらみ、各政党は自主投票を決め、県議や国会議員も目立った動きを控えた。地縁なども複雑に絡み、票の動きは不透明になった。

 感染拡大によるまん延防止等重点措置の適用で大規模集会を自粛せざるを得ない中、知名度不足をどう補うかが課題だったが、内田氏は市議会最大会派を中心とした市議の支援や連合、JAの推薦を受け、他陣営を上回る組織を構築。政見を浸透させ、新型コロナや災害対応を巡る市政への批判票の受け皿となった。

 清水氏は2期の実績を訴えたものの、感染拡大が逆風となり支持離れが進んだ。同じ常磐地区を地盤とする候補の出馬で票が割れたことも影響した。宇佐美氏は医療・福祉政策に関心を持つ女性や若者らから一定の支持を得たが、組織力の低さが響いた。経済人の立場で改革を訴え、無党派層の取り込みを図った猪狩氏は浸透し切れなかった。

 2005(平成17)年から続く保守分裂の構図は変わらず、4候補の乱立など禍根を残す選挙となった。内田氏には異なる意見をまとめ上げるリーダーシップと、待ったなしの新型コロナ対応が求められる。(いわき支社・大内義貴)

◇いわき市長選開票結果(選管最終、敬称略)
当45,885 内田 広之 49 無新
 28,258 宇佐美 登 54 無新
 26,658 清水 敏男 58 無現
 25,512 猪狩 謙二 59 無新