「区割り改定」32首長反対 衆院小選挙区、福島県内アンケート

 

 衆院選挙区画定審議会(区割り審)の小選挙区定数「10増10減」を巡る勧告期限が25日に迫っている。本県は現状の定数5から1減の定数4となるが、県内59市町村長のうち半数超の32市町村長が「1票の格差是正」を目的とした区割りの改定に反対であることが、福島民友新聞社のアンケートで分かった。背景には定数減で地方の声が国政に届きにくくなるとの懸念がある。

 アンケートでは区割りの改定について「賛成」「反対」「その他」から一つを選んでもらい、理由も尋ねた。その結果、32市町村長が「反対」と回答。「その他」が24市町村長で、「賛成」はいわき、石川の2市町長にとどまった。
 「反対」とした首長のうち、会津若松市の室井照平市長は「単に人口基準に基づく区割りは一体性のある地域を分断する」と指摘、白河市の鈴木和夫市長は「人口減少が進む地方では議員数の減少が避けられない」と危機感を示した。

 前回2017年の改定では、当時福島3区だった西郷村が4区に編入された。高橋広志村長は「反対」とした上で「西白河郡、県南から1村だけ外れている現状で、不合理が生まれている」と実情を訴え「1票の格差以上に地方は厳しい現実にさらされている」として定数の基礎的配分を求めた。

 「その他」とした首長からも、地方の声を反映させる必要性を求める声が相次ぎ、福島市の木幡浩市長は「国土の均衡ある発展の観点から地方の議員数を保証するような仕組みを検討すべきだ」と強調した。「真の地方分権が進展し、国と地方の役割、責務が明確化されれば、定数や区割りは大きな問題にならない」(須賀川市・橋本克也市長)との意見もあった。

 一方、「賛成」と回答したいわき市の内田広之市長は「著しい投票価値の不平等状態にあるとの高裁判決が示されており、その是正に寄与するため」と理由を説明。石川町の塩田金次郎町長は「やむを得ないこと」としながらも「改めて長期的視点に立った仕組みを考えていくべきだ」と注文を付けた。相馬市の立谷秀清市長は「憲法の領域で回答は差し控える」との立場だが「民意の適切な反映という意味では大いに懸念がある」とした。

 区割り改定を巡り、区割り審は一定の場合を除き、市町村を分割しないことを原則とする方針で、減員県では人口最少選挙区を手掛かりとして境界変更するとしている。県内選挙区では福島4区が最も人口が少ないが、内堀雅雄知事は今年1月、意見照会に対して、会津地方の市町村が分割に強く反対していることなどを踏まえ「『数合わせ』のための市や郡の分割は避け、地域の特性を十分に考慮の上、慎重に審議するよう求める」と回答。「意見書に沿って、地域としての一体性に配慮し対応してほしい」(郡山市・品川萬里市長)など多くの首長が知事意見に賛同した。

 定数減「影響ある」9割弱52首長懸念

 福島民友新聞社が行った衆院小選挙区の定数「10増10減」に伴う県内市町村長アンケートでは、定数1減による本県の復興や地域振興への影響についても聞いた。9割弱に当たる52市町村長が「影響がある」とし、国と地方のパイプ役として期待される衆院議員の減少を不安視する状況が浮き彫りとなった。

 定数減の影響について「ある」「ない」「その他」の三つの選択肢を挙げ、理由とともに尋ねた。52市町村長が「ある」とし、「ない」と回答した首長はいなかった。残る7市町村長は、具体的な区割りが示されておらず影響の有無を見通せないなどとして「その他」とした。

 中でも東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた自治体は、地元の衆院議員が減少することへの懸念を示す。川内村の遠藤雄幸村長は「被災地の人口減少による再編となれば、被災地住民の声が届きにくくなるのでは」、広野町の遠藤智町長は「地方創生の時代を迎える中、国民生活の充実が図れない」と訴える。

 本県選出議員は、復旧・復興に向けた財源確保や福島復興再生特別措置法の制定などで大きな役割を果たしてきた。「被災地を訪れ、国に現状を訴えていただいたことで全力で取り組めた」(富岡町・山本育男町長)、「地域の情報を理解しており、実態に即した迅速な対応をしていただいた」(浪江町・吉田数博町長)としており、定数減の影響は大きいと捉える。

 影響は、県内全域に広がる。喜多方市の遠藤忠一市長は「過疎化などの地域課題が山積しており、対応に国会議員の存在は極めて重要」と指摘、本宮市の高松義行市長は「現在の区割りによる国とのつながりに慣れており、地域の要望を伝えることが難しくなる」と不安を募らせた。