浪江町長に新人・吉田氏 市街地と帰還困難区域の再生など訴え

 
初当選を果たし、決意を述べる吉田氏。右は妻こはくさん

 任期満了に伴う浪江町長選は10日、投票が行われ、即日開票の結果、いずれも新人で、無所属の元県議吉田栄光氏(58)が6339票を獲得し、諸派の会社経営高橋翔氏(34)を5895票差で破り、初当選した。任期は8月5日から4年。

 町長選は原発事故後、4度目。町内居住者が震災前の1割にとどまる中、帰還を後押しする取り組みや生活環境の改善、町域の8割を占める帰還困難区域の再生などが焦点となった。

 吉田氏は現職吉田数博町長の政策を継承し医療福祉と教育の充実、市街地と帰還困難区域の再生、農林水産業の復興などを訴えた。

 投票率は49.43%で、前回の43.08%を6.35ポイント上回った。当日有権者数は1万4069人(男性6896人、女性7173人)。

 当選証書付与式は11日、町役場で行われる。

 復興「即戦力」に期待

 【戦いの跡】現職の引退表明に伴い、新人2人が争った浪江町長選。有権者は、県議会議長などを歴任した政治経験を復興加速に向けた「即戦力」と期待し、吉田栄光氏を新たなリーダーに選んだ。

 18日間の異例の長期戦で吉田氏は、多くの町民が町外で離れて暮らす現状から各地に幅広く出向き、古里再生への政策を訴えた。町議の大半が支援に回ったことも票固めにつながった。

 高橋翔氏は宇宙関連の産業振興策を掲げたが、及ばなかった。

 町内の一部地域は原発事故による避難指示解除から5年余りを経て生活環境の整備が進む一方、居住率は震災前の1割にとどまる。

 町の面積の8割を占める帰還困難区域の再生も喫緊の課題だ。吉田氏は「町民は避難先に投資し、帰りたくても帰れない」と分析し、官民協働で地域経済を立て直すことで活力を呼び込む考えを示す。山積する課題解決に実行力を発揮できるか、吉田氏の手腕が試される。(浪江支局・渡辺晃平)