【知事選・候補者アンケート(下)】移住・定住や物価高ほか

 

 福島民友新聞社は、知事選(30日投開票)の候補者2人を対象にしたアンケートで、今年4月に戦後初めて180万人を下回った本県の人口減少対策について聞いた。子育て支援や若者の雇用の場の確保など共通する取り組みを挙げた一方で、移住・定住については対応が分かれた。現職の内堀雅雄候補(58)=2期、福島市=は推進するとし、新人の草野芳明候補(66)=共産推薦、須賀川市=は当面、距離を置く姿勢を見せた。

 内堀氏・「推進」成果表れる、草野氏・「呼び込み型」批判

 【移住・定住】本県への2021年度の移住者は1532世帯2333人に上り、20年度から倍増して過去最多を更新した。県は「地域課題への参画に関心がある若者の呼び込みや、避難地域への移住支援を充実させた効果」とみている。

 人口減少対策で、内堀候補は「結婚・出産・子育ての切れ目のない支援」「仕事と育児が両立できる職場環境づくり」「若者の定着に向けた魅力ある雇用の場づくり」に加え、これまでの取り組みで成果が表れ始めている移住・定住についても「推進する」とした。

 一方、草野候補は「現県政は移住に重点を置く『呼び込み型』」と批判。将来的な取り組みとしては否定しないものの「子どもを産み育てやすい環境整備を中心に据える視点が乏しい」として子育て、教育の負担軽減、貧困から子どもを守る必要性を強調した。

 出生率向上に向けた子育て支援策については、内堀候補は「市町村などと連携した事業展開やサポート体制の充実とともに、18歳以下の医療費無料化などの経済的負担軽減などきめ細かく支援していく」、草野候補は「子どもの医療費無料化は当然継続する。子育て・教育の予算を抜本的に拡充し、給食費の無償化や給付型奨学金制度の創設に取り組む」とした。

 内堀氏・只見線創生モデルに、草野氏・重要な生活の足守る

 【地方路線】アンケートでは、JR東日本が県内4路線9区間を含む赤字路線を示したことを踏まえ、地方路線の活性化策についても聞いた。

 内堀候補は全線で再開通した只見線を「日本一の地方創生路線として活性化のモデルにする」とした上で、国やJRに地域住民の意見を聞きながら利活用促進策などの議論を重ねるよう求めていくとした。

 草野候補は「通勤・通学に不可欠な生活路線が多く、重要な足。JR東自体は黒字であり、赤字を理由に廃線しないよう求める」と主張。また自然災害に鑑み「鉄道を公的復旧の対象に加えるべきだ」と指摘した。

 内堀氏・きめ細かく支援、草野氏・対策「評価せず」

 【物価高】内堀候補は「評価する」と回答。生活困窮者、地域公共交通や農林水産事業者の負担軽減、小規模小売店などへの支援に取り組んできたとし「今後も幅広く、きめ細かな支援と地域経済の活性化に向けて取り組む」とした。

 草野候補は「評価しない」を選んだ。「物価高騰の根っこはアベノミクスの大失政。異次元の金融緩和による異常円安が大きな原因」と指摘。国に対し、消費税5%への減税や最低賃金1500円の実現、年金削減のストップなどを求めた。

 内堀氏・医療体制を強化、草野氏・医療現場は逼迫

 【感染対策】内堀候補は「評価する」と回答。「基本的な感染対策の徹底を呼びかけるとともに、医療提供体制の強化や検査体制の充実、ワクチン接種体制の構築など、関係機関・団体などと緊密に連携して取り組んできた」とした。

 草野候補は「評価しない」と答えた。「医療現場の逼迫(ひっぱく)は国の医療体制のもろさ、弱さの表れ」と主張。「全数把握の一律見直しをそのまま受け入れるのではなく、県独自の詳細把握を継続し県民の命に責任を持つことが重要」とした。

 内堀氏・地域経済維持、草野氏・命を守る対策

 【社会再生】内堀候補は「その他」を選択。プレミアム付き電子商品券の発行や県民割などの需要喚起策を実施しており、「引き続き地域経済の維持・再生を図っていく」とした。

 草野候補は「どちらとも言えない」と回答。「科学的知見を踏まえた評価と対策が必要」とした上で「経済は重要だが当面は感染拡大防止、命を守る対策に重点を置くべきだ」とした。

 内堀氏「点数評価難しい」、草野氏「県民不在で0点」

 【県政運営】内堀候補は「点数評価は難しい」、草野候補は「0点」とした。

 内堀候補は「避難指示解除や農産物の輸出拡大、移住の増加など成果が表れている」とする一方で「復興・創生はもとより、相次ぐ自然災害や新型コロナ、物価高などさまざまな困難を抱えている」と答えた。

 草野候補は「県民の立場で国にものを言う姿勢が見られない。国と一体の県政」と批判。「県民不在の大型事業優先の県政で、教育、子育て、医療・福祉の予算が後回しになっている」と厳しく指摘した。

 内堀氏・その他、草野氏・評価せず

 【岸田政権】内堀候補は「その他」とし「復興の進捗(しんちょく)に伴って新たな課題も顕在化している。今後も現場に足を運び、県民の思いをしっかりと受け止め、きめ細かく対応してほしい」と求めた。

 草野候補は「評価しない」を選択。「内政、経済などどの分野も安倍・菅政権の継承。賃金は上がらず、低年金、高すぎる教育費で大変な国民生活を守る政策は見えない」と批判した。